2023 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫卵移行ペプチドを用いた革新的ゲノム編集技術の開発
Project/Area Number |
22KJ1674
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
白井 雄 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
|
Keywords | 昆虫 / ゲノム編集 / CRISPR / 卵巣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、メス成虫への注射によってゲノム編集を可能にする、革新的な遺伝学的ツールの開発を目指すものである。2022年に、市販のCas9タンパク質をメス成虫に注射することで次世代でのゲノム編集を可能にするDIPA-CRISPR法を、甲虫とゴキブリを使って開発した。しかし、本法の詳細な適用範囲は不明であったため、2023年度は、その適用可能種の拡大に取り組んだ。昆虫の卵巣タイプは、無栄養室型(ゴキブリなど)、端栄養室型(甲虫など)、多栄養室型の3種類に大別することができる。そこで、多栄養室型の卵巣を持つ蚊において、DIPA-CRISPR法が適用できるかを検証することにした。条件検討の結果、約4%の変異導入効率を達成することに成功し、これによって、すべての卵巣タイプで本法が有効であることが明らかになった。また、端栄養室型の卵巣を持つ、カメムシ目の2種においてもDIPA-CRISPR法の適用に成功し、約30-40%の変異導入効率を達成した。 総括としては、本研究によって昆虫のゲノム編集技術に革新的なブレークスルーをもたらすことができたと思う。本研究に取り組む前は、昆虫のゲノム編集は卵のインジェクションに強く依存しており、多くの研究者を悩ませていた。今回の成果によって、成虫注射への高効率なゲノム編集法であるDIPA-CRISPR法を開発し、従来法を大幅に簡略化した。これにより、遺伝子改変が不可能であったゴキブリにおいて、初めてゲノム編集個体の作出に成功した。さらに、甲虫・蚊・カメムシなどの多様な昆虫を用いてその適用範囲の拡大にも取り組み、汎用性の高さを証明した。また、ノックイン実験・タンパク質エンジニアリングなどの本法の高度化にも取り組み、今後の将来性についても検討することができた。
|