2021 Fiscal Year Annual Research Report
硫気孔原における極限植物ヤマタヌキランのAl耐性進化の解明
Project/Area Number |
21J21257
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長澤 耕樹 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 適応進化 / 酸性土壌適応 / 低pH耐性 / 極限植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の予定通り,水耕栽培実験に基づくヤマタヌキランのAl3+耐性(以下,Al耐性)と低pH耐性の評価を行った.ヤマタヌキランと姉妹種であるコタヌキランの種子由来の実生を用いて,pH(=1.5, 2.0, 2.5, 3.0, 4.5)とAl濃度(= 0, 50, 100, 250, 500μM)が異なる溶液にて水耕栽培を行い,根の伸長過程を記録した.その結果,ヤマタヌキランではpH < 2.0で生育が阻害された一方,コタヌキランではpH < 3.0で著しい生育阻害が認められ,両種で低pH耐性に顕著な差が見られた.それに対して,Al耐性については両種とも100μMを超える濃度条件下でも生育阻害は認められず,両種の間でAl耐性に差が認められなかった.以上の結果より,ヤマタヌキランの火山性強酸性土壌への適応には低pH耐性の獲得が重要な役割を果たしたことが考えられた.この結果は,Al耐性が強酸性土壌への重要な適応機構であるとする研究開始時の予想とは異なるもので,今後は低pH耐性に着目した適応機構の解明へと研究方針を変更する必要があるものと考えられる.この成果については,現在国際誌への論文投稿の準備を進めている. また次年度以降の強酸性土壌への適応に関わる遺伝的基盤の解明のため,参照配列となるドラフトゲノムの構築も行った.ナノポアシーケンサーより得たロングリードを用いて,ヤマタヌキランとコタヌキランの両種についてドラフトゲノムの構築を試みた.その結果,ヤマタヌキランでは480Mb・33本(もしくは34本)の染色体が38本のスキャホールドにまとまり,次年度以降のゲノム解析に十分なクオリティのドラフトゲノムの構築に成功した.こちらの成果については,日本生態学会第69回大会にて発表した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予想していたAl耐性ではなく,低pH耐性に顕著な差が見られたことから,比較発現解析における栽培条件の検討などを追加で行う必要が生じ比較発現解析の着手が遅れたものの,その他の部分は計画通りに進んだため.
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Strategy for Future Research Activity |
来年度以降は低pH耐性の進化に着目し,その遺伝的基盤の探索を進める.具体的には,比較発現解析にもとづき種間やpH処理の有無に応じて発現変動する遺伝子を抽出し,それらの機能的側面にもとづいて,トランスクリプトームワイドに候補遺伝子のさらなる探索を進める.また,ゲノムリシーケンスデータから両種のゲノム比較を行い,比較発現解析の結果と合わせて,候補遺伝子の絞り込みを進める.
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