2023 Fiscal Year Annual Research Report
固体と相互作用する分子に対する量子化学計算手法の確立
Project/Area Number |
22KJ1684
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
今村 洸輔 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 量子化学計算 / 表面グリーン関数 / 表面 / 低次元物質 / 電子共鳴状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、分子とその周辺の固体原子からなる部分系(クラスター)の計算を外向波境界条件下で実行する開放境界クラスターモデル(OCM)に関する理論開発を行ってきた。OCMにより、クラスター領域外への電子拡散の効果が適切にモデル化され、クラスターの計算に固体電子状態の連続性を反映させることがきる。2022年度は、外向波境界条件を課すために必要な複素吸収ポテンシャル(CAP)を表面グリーン関数理論に基づき構成する新規手法を提案した。2023年度は、提案した手法に関する補助的な数値計算を行い、成果をまとめた論文を学術雑誌に発表した。この成果により、OCM計算に必要なCAPをクラスターのハミルトニアンをもとに構成することが可能になった。さらに今年度は、開発した手法を拡張することで、ハミルトニアンが非直交基底により表現される場合にも同手法の適用が可能になった。この際、分子の局所的な電子状態と、固体の遍歴的な電子状態の両者の記述に最適な基底関数が必要となる。そこで、固体の原子位置以外にも規則的にガウス型関数を配置することで、局在型と平面波型が共存する基底関数の生成に成功した。また、多数生じる仮想軌道について断熱接続解を求めることなくCAPを構成できる手法を考案した。開発した手法を一次元固体のモデルポテンシャルに適用した結果、バンド計算から得られる状態密度の形状をよく再現できることが明らかになった。また、不純物の存在によりポテンシャルの一部が変形した場合についても同様の結果を得た。この成果についても論文作成を行い、学術雑誌への投稿を行った。これらの成果により、一般的な量子化学計算プログラムから得られる結果をもとにOCM計算が実行できるようになり、分子と固体が相互作用する系の電子状態をより適切に計算することが可能になった。
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