2023 Fiscal Year Annual Research Report
不均一酸化物は精錬に有効か?-脱リン反応解析に向けた活量測定と溶体モデルの構築-
Project/Area Number |
22KJ1689
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
齋藤 啓次郎 京都大学, エネルギー科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 精錬スラグ / 脱リン反応 / 活量 / 熱化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
鉄鋼などの素材精錬プロセスの高効率化のためには酸化物系の熱化学データが重要となる。本研究では製鋼スラグの基本形であるFeO-CaO-SiO2-P2O5四元系に注目し、(Ca,Fe)2SiO4-(Ca,Fe)3P2O8固溶体中成分の活量測定を行った。H2/H2O分圧比を制御して1573Kに昇温した反応管内で(Ca,Fe)2SiO4-(Ca,Fe)3P2O8固溶体を含む酸化物相とCu-Fe-P液体合金を平衡させ、その合金組成を分析することでFeOおよびP2O5活量を算出した。熱化学的な考察により、実験結果を複合酸化物(Ca2SiO4, Ca3P2O8, Fe2SiO4)の活量として整理し直し、この方が固溶体の性質をよく理解できることを示した。実操業脱リンプロセスで重要な働きを持つ(Ca,Fe)2SiO4-(Ca,Fe)3P2O8固溶体について、基本的な考え方や取り扱い方を提供できた。 一方、純粋なCa3P2O8の熱化学データにも注目すると、このデータは過去の複数の文献で測定者によるばらつきが大きいことが問題であった。そこで、本年度はこれまでに行ってきた熱化学測定手法を応用し、Ca3P2O8の標準生成Gibbsエネルギーを測定した。(i)系の平衡到達の判定、(ii)測定系への不純物混入の防止、(iii)ガス雰囲気制御と化学分析に由来する実験誤差に関してさらなる検討を行い、信頼性の高いデータを得ることができた。これに加えて、合金系の熱化学データの不確かさがCa3P2O8のデータに影響し、過去の文献値の信頼性低下を招いていることを明らかにした。これによって、これまで測定が困難とされてきたリン酸塩に関する熱化学測定の手法を確立できた。
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