2021 Fiscal Year Annual Research Report
電力変換回路の小型集積化に向けたSiC MOSFETのディジタル駆動回路の開発
Project/Area Number |
21J22448
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高山 創 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | デジタルアクティブゲートドライブ / 炭化ケイ素 (SiC) / 窒化ガリウム (GaN) / パワーMOSFET / 最適化 / パワーエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、次世代パワー半導体として期待されている炭化ケイ素 (SiC) MOSFETの活用のため,ゲートドライブ回路をフルデジタル化する技術を確立し、動作条件やデバイス特性の違いを考慮した柔軟な電力変換回路動作の実現を目指すものである。D/A変換回路の回路構造を応用したデジタルアクティブゲートドライバ (DAGD)を提案し、その有効性を検証している。 今年度の取り組みとして、異なる動作条件下で駆動されるSiC MOSFETに対し、ゲート電圧波形を個別に最適化するような駆動手法の開発に向け、遺伝的アルゴリズムを応用した制御を検討した。同アルゴリズムは、生物の遺伝子を模擬した1/0の2進数で表される文字列を最適化するものであり、複数ビットのゲート信号列を用いてデバイスを駆動するという本ドライバの動作との類似性から、その適用の有効性を予想した。シミュレーションによるシステム検証を行い、遺伝的アルゴリズムによる動作の最適化が可能であることを確認した。さらに、最適化されたゲート電圧波形を分析した結果、過渡状態において選択する電圧値によってスイッチング特性が有意に変化すること、またその電圧値がデバイスの動作条件や素子の特性によって大きく変化することを明らかにした。 さらに、ドライバの動作の高速化のために,SiC同様に次世代半導体として期待されているGaN HEMTを使用し設計・製作した、8ビットDAGDの動作検証を行なった。数ナノ秒オーダーでのゲート電圧波形の調整が可能であることを確認した。DAGDの動作最適化システムの実証に向けた準備を進めている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、現在までのところ,概ね予定通りの進捗となっている。本年度の研究における目的として、駆動アルゴリズムの構築およびその有効性の検証と、GaN HEMTを応用して製作した8ビットDAGDの実証実験の大きく2つの方向性を予定していた。数値計算をベースにまずは前者の課題を主に検討し、遺伝的アルゴリズムを元にした駆動システムの有効性を確認した。その後8ビットDAGDの動作を実験的に検証し、GaN HEMTの優れた特性を活かした高速なゲート電圧波形の調整が可能であることを確認した。これらを元に、実際に8ビットDAGDを使用してSiC MOSFETの駆動を最適化する実験を計画しており、現在その準備を行なっている。 SiCパワーMOSFETでは,デバイス特性のばらつきへの対処が,複数素子を直並列で駆動する際の課題の一つとなっている.今年度の研究成果は,こうしたデバイス特性のばらつきに対し,DAGDによって素子毎に駆動を調整することで,同じようなスイッチング特性を得られる可能性を示すものである.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果では、単一の素子の駆動において、動作条件や素子の特性の差異に対応した最適な駆動が存在することを確認した。現実の電力変換回路では、大きな電力を扱うために、SiC MOSFETを直列および並列に接続して使用することが多い。こうした回路において先述の差異があった場合に、各素子に個別のゲート電圧波形を指定して駆動を行うことで、最適な動作を得られるか調べることが、取り組むべき課題の一つである。制約条件や差異の程度によってどのように最適な駆動が変化するか、デバイスの特性等に基づく分析が必要となる。 また、本年度の研究成果から、最適化された解を分析することで、ゲート閾値電圧やゲートプラトー電圧などのデバイスの特性に関する情報が得られることがわかった。これを応用して、デバイスの状態を記録しながら、動作条件が変更された場合にその情報を活かした駆動を行うようなシステムを構築することも課題の一つである。 今後はまず上記の最適化システムの実験実証に取り組み、それを基に上記で挙げたような課題に取り組むことを計画している。
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Research Products
(7 results)