2021 Fiscal Year Annual Research Report
空間反転対称性の破れが生み出す量子多体現象の探索と解明
Project/Area Number |
21J23007
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野垣 康介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 重い電子系 / トポロジカル超伝導 / 第一原理計算 / 量子臨界現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題においては「空間反転対称性が破れ」をキーワードとして、強相関電子系における新奇量子相及び量子臨界現象の解明と探索を目的としている。特に、局所的に空間反転対称性が破れた新奇重い電子系超伝導体CeRh2As2の温度-磁場相図における超伝導多重相図の報告を受け、国内外で理論的、実験的研究が盛んに行われている。本年度は,重い電子系超伝導体CeRh2As2の発見に触発され、主として以下の2つの提案を行った。 (1)低温高磁場相における非共型対称性に守られたトポロジカル超伝導の発現 (2)量子臨界揺らぎによる転移磁場の顕著な増大 (1)に関して、電子状態からトポロジカル超伝導であるか否かを判定できる「フェルミ面公式」を群論に基づいて導出し、第一原理計算を併用することでCeRh2As2がトポロジカル超伝導体となり得ることを示した。本成果に関しては4件の口頭発表を行い、結果をまとめた論文はPhysical Review Research誌で出版された。 (2)に関して、CeRh2As2において実験的に観測された転移磁場の値と従来の平均場理論からの予言値は大きく矛盾していた。本成果では強相関効果を取り入れた模型を構築、解析し、量子臨界揺らぎ及び超伝導の性質を明らかにした。その結果、NMRによる実験で明らかにされたCeRh2As2のXY型の反強磁性磁気揺らぎを再現することを見出した。さらに量子臨界揺らぎを媒介とした超伝導の可能性を議論し、転移磁場が反強磁性量子臨界揺らぎによって著しく増強され、観測値が再現されることを示した。本成果に関しては1件の口頭発表を行い、本成果についてはすでに研究が完成しているため、論文としてまとめて投稿する段階にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、トポロジカル相に関する知識を身につけたことで、CeRh2As2の低温高磁場相でのトポロジカル結晶超伝導の可能性について予言することに成功した。その過程において第一原理計算を習得できたことは本研究員の今後の研究を大きく促進すると考えている。これらの成果はPhysical Review Research誌で出版され、国際会議で招待講演を行うに至り、国際的に高く評価されていると考えている。 また、強相関効果を取り入れた模型の解析を遂行することによって、従来の平均場理論では説明がつかない現象の謎を解明したことは、CeRh2As2の超伝導多重相図を理解する足掛かりを築いたを考えている。 以上の理由により、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、本年度に構築した強相関模型を発展させ、実験で観測されている四極子密度波状態を説明できる模型を構築、解析しこれらの理論を発展させる。この現象においては、近藤温度と結晶場分裂の大きさが同程度であることが重要であると指摘されている。これを受け、動的平均場理論などのの新たな手法を身に着けつつ研究を発展させていきたいと考えている。 また、多極子量子臨界現象としての側面も探索していく。具体的には輸送係数等を計算することで、空間反転対称性の破れが量子臨界現象にどのような影響を与えるのか探究する。
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Research Products
(7 results)