2023 Fiscal Year Annual Research Report
アザ置換フェニレンビニレン共役系の開発とヘテロ元素配位による発光制御戦略の確立
Project/Area Number |
22KJ1722
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 将志 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | azobenzene / boron / luminescence / conjugated polymer |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、縮環型アゾベンゼンホウ素錯体を基盤とする、近赤外発光性π共役系高分子の高機能化に向け、π共役系から垂直に張り出すホウ素置換基に着目した分子設計を行ってきた。本年度は、この錯体の電子アクセプター性を極限まで高め、これを基盤とした第二近赤外発光性のドナーアクセプター型π共役系高分子の創出を行った。ホウ素置換基として強力な電子求引性基であるトリフルオロメチル基を導入することで、誘起効果によりLUMO準位が低下することを確認した。加えて、トリフルオロメチル基は溶解性の向上にも寄与し、ドナーの選択の幅が広がった。得られたドナーアクセプター型高分子の吸収発光は1000 nm以上の波長域である第二近赤外領域にまで長波長化することに成功した。得られた高分子はミセル化することで水中でも発光を観測でき、なおかつ拡張されたπ共役系に起因した優れた光吸収能により良好な輝度であることも明らかにした。バイオイメージング分野で特に有望視される第二近赤外発光性材料の設計において、利用できる電子アクセプター骨格は非常に限定的であった。本研究は、縮環型アゾベンゼンホウ素錯体のポテンシャルを実証し、第二近赤外発光性材料の設計の幅を広げることに寄与できたと考えている。 計画段階では、ホウ素だけでなく、他の元素の導入による機能性材料の開発も予定していたが、新たに開発した当該ホウ素錯体のホウ素置換基の修飾法をきっかけに、ホウ素置換基に着目した高分子の機能開拓に注力する運びとなった。その結果、当初予定していた固体発光性の強化以外にも、凝集誘起発光性の発現や、波長変換能の付与、上述した第二近赤外発光性の付与を達成した。加えて、クリックケミストリーによる重合後修飾と外部刺激による導入ユニットの放出を実証し、新たなセラノスティクス薬剤としての応用可能性を示し、基礎と応用の両面から当該材料の有用性を見出すことができた。
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