2021 Fiscal Year Annual Research Report
帯観測モデルを用いた質量分析の性能向上と包括的タンパク質同定システムの開発
Project/Area Number |
21J23154
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上村 京也 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | スパースモデリング / マススペクトル / 質量分析 / QMS / 帯観測 / 低分解能観測 / 圧縮センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
年次計画に従い,QMS実測定系が有する特性についての調査を行った.QMSの実観測信号ノイズについての予備検討の結果,特有のノイズ特性(非負性・信号値依存性)によって分布構造にガウス分布を仮定する推定手法(代表的なスパース推定手法であるLasso推定を含む)の適用が不適当であることが明らかとなった.その後の文献調査や観測信号生成過程の定式化によってポアソン-アーランモデルによるモデル化を行い,その妥当性を統計的仮説検定に基づいて定量的に明らかにした.QMS実測定系が有する真の観測行列については,適切な仮定のもとで観測過程を定式化し,測定条件をコントロールすることで,目的の観測行列を十分な精度で取得することができた.この結果,当初計画にあったQMF内のイオン粒子の軌道シミュレーション及び辞書学習を行う必要がなくなったため,これらについては実施しなかった.これらの成果は帯観測に基づくマススペクトル推定技術をQMS測定系に実装する上での不可欠の段階であると同時に,他のQMS測定技術の確立にも貢献する成果である. これらと並行して,帯観測モデルに基づくスパース推定の技術をQMSより高次の質量分析手法であるタンデム質量分析へと適用する試みも行なっており,現在はこれに先駆けた初期検討を行なっている.研究成果の対外発表については,2021年8月に帯観測に基づくスパーススペクトル推定技術についての特許出願を行っており,同技術に関する研究論文についても現在執筆中であり,今後,査読付き英文論文誌・国際学会に投稿予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究内容を洗練したことで当初の研究計画にあった冗長な作業を回避することができ,研究目標であるQMS実測定系に関する定式化の達成と実測実験への取り組みができているため.また,今後の研究計画に関しても,MS/MSに関する定式化やポアソンーアーランモデルに基づくスパース推定アルゴリズムの定式化が既に完了しており,展望が明るいため.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果として得られたQMS観測行列と観測信号モデルに基づいてスパース推定アルゴリズムを構築し,実際のQMS測定結果に対して当該マススペクトル推定手法を適用する.この際,解くべき問題の高次元性が課題となっているので,アルゴリズムの高速化や並列化等の高次元問題への取り組みも併せて行う.また,現在執筆中の帯観測モデルに基づくスパース推定に関する研究について論文投稿を行い,国際学会等で発表を行う.
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