2021 Fiscal Year Annual Research Report
電波銀河の多波長観測による銀河とブラックホール共進化の解明
Project/Area Number |
21J23187
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
瀬戸口 健太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 多波長天文学 / 巨大ブラックホール / 銀河とブラックホールの共進化 / 活動銀河核 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、銀河と巨大ブラックホール(SMBH)の共進化の解明である。その鍵となるのは、銀河進化に影響を及ぼす活動銀河核(AGN)ジェットを持つ電波銀河である。課題としている電波銀河の宇宙論的性質の理解のため、まずはSMBH質量を推定できる1型AGNとその母銀河(通常銀河も含む)の性質について遠方宇宙から近傍宇宙に渡って調べることが肝要である。電波銀河と結果を比較することにより、電波銀河が持つ特有の性質やAGNジェットが銀河に与える影響を議論することが可能となる。2021年度は、近傍宇宙(赤方偏移z=0.2-0.8)のX線で検出された1型AGNを対象に電波からX線までの多波長観測データをクロスマッチした。多波長データに対し、クランプ状トーラスを仮定したモデルによる解析を行い65天体のスペクトルエネルギー分布(SED)再現に成功した。さらに解析時に母銀河成分を抽出した可視光カタログを利用することで、従来の解析に比べ信頼度の高い銀河の星質量・星形成率を推定した。サンプル全天体についてSMBHの質量・質量成長率が推定されており、これら4種の物理量を比較することで近傍の1型AGNにおける共進化の様子の調査が可能となる。 加えて、銀河形成の様子に対応する銀河の形態と、銀河からSMBHへ質量供給する役割を持つトーラスの構造を調べるため先行研究からはセルシック指数を調査し、SED解析からはAGNトーラスのcovering factorを推定した。ともに銀河とブラックホール進化の理解に重要なパラメータであり、これらのパラメータを全て組み合わせた議論は初の試みである。以上の取り組みからは共進化と銀河形態・トーラス構造の関係についても言及できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は(1)近傍電波銀河カタログ作成と、可視光や赤外線観測データとの同定、(2)ALMA(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)とX線衛星Chandraで探査された領域における最遠方(z>2)電波銀河検出および、ALMAの観測データとChandraのX線スペクトルから、銀河とSMBHの質量成長率を表す星形成率と質量降着率の推定、(3)京大3.8mせいめい望遠鏡の可視面分光装置による近傍電波銀河の追観測、という3つであった。 本年度は(1)に関する研究のみであったが、1型AGNに対して次年度に遂行する予定であったSED解析による物理量(星質量、星形成率)推定も達成した。その後電波銀河に対し同様の解析を行い比較することで、近傍宇宙における電波銀河の基本的性質解明の達成が期待される。また、当初は予定していなかった銀河形態とAGNトーラスに関連する重要なパラメータ(セルシック指数、AGN covering factor)の調査にも成功した。 加えて本年度は、遠方宇宙(z~1.4)における1型AGNの共進化を調査した研究(Setoguchi et al. 2021)の内容を10月に国際会議 East-Asia AGN meetingにて口頭発表し、研究成果について積極的にアピールをした。 以上より、本年度の進捗は当初の計画と比較して概ね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的は、遠方宇宙から近傍宇宙にわたる電波銀河の性質の宇宙論的進化解明と、電波銀河におけるAGNジェットの星形成への作用の解明である。 1型AGNにおける共進化についての2021年度の研究結果を論文として執筆したのち、当初の計画の通り電波銀河の宇宙論的進化を統計的に調査する。具体的には、電波とX線による観測を利用した最遠方、近傍における電波銀河の探査と多波長SED解析を遂行する。AGNジェットが共進化に与える影響が近傍宇宙と遠方宇宙で同様であるのか、各進化段階で銀河とSMBHのどちらが先に進化しているのかについて結論をつける。また、せいめい望遠鏡による面分光観測を行い、電波銀河における星形成率の面密度の分布を調べる予定である。この観測で明らかになる電波銀河の星形成活動を、ジェットを持たない通常銀河の星形成活動と比較することで、AGN ジェットが母銀河に及ぼす具体的な作用や、他に共進化に影響するメカニズムは存在するのか議論する。以上の研究から、遠方から近傍に渡る電波銀河の宇宙論的進化、AGNジェットが母銀河の星形成に与える影響を解明する。
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