2022 Fiscal Year Annual Research Report
電波銀河の多波長観測による銀河とブラックホール共進化の解明
Project/Area Number |
21J23187
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
瀬戸口 健太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 巨大ブラックホール / 活動銀河核 / 多波長天文学 / 宇宙論的進化 / X線天文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、Stripe 82領域内のX線で検出された z~0.5の活動銀河核(Active Galactic Nuclei ;AGN) における銀河・ブラックホール共進化の研究を完遂した。信頼できる 1 型の母銀河と AGN のパラメータを推定するため、母銀河可視測光データを抽出したカタログ (Li+21) を使用した。1 型 AGN におけるブラックホール質量 (MBH) と星質量 (Mstellar) 比の平均は log(MBH/Mstellar) = -2.7 ± 0.5 であり、近傍宇宙 (z- 0) における MBH-バルジ質量比に近い。この比はz~1.5 における全波長光度の大きい (log Lbol > 45) 1 型 AGN に対してやや小さく、この結果は log(MBH/Mstellar) の光度依存性によって説明され、赤方偏移依存性は小さいことを解明した。1 型と 2 型は、同一の Lbol の範囲では似た Mstellar 分布を持ち、一方で Lbol は 1 型より小さいことが分かった。この結果は、Lbol もしくは λEdd に依存するAGN統一描像を示唆している。 また、X線衛星Swift/BATかつ電波干渉計ALMAで検出された最近傍宇宙(<100Mpc)のBASS (BAT AGN Spectroscopic Survey) AGN 31天体(41.4<log Lx<43.4)について解析した結果、BASS サンプルはStripe82 領域サンプル(z~0.5)とSXDS領域のサンプル(z~1.5; Setoguchi+21)を統合解析した線形回帰の関係に概ね沿い、log(MBH/Mstellar) は光度の依存性が大きいという結果を支持し、低光度・近傍と高光度・遠方のAGNが異なる種族という有意な証拠は得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Stripe 82領域におけるX線で検出された赤方偏移(z)~0.5のAGNの研究を完了した。本年度は新規に、最近傍宇宙(z<0.02)に位置するX線で検出されたBASS 天体の研究も遂行した。これにより、X線で検出されたAGNについてz~1.5からz~0の時代までの宇宙論的性質を議論し、当初より目的としていた共進化の起源を探る上で必須な調査を完遂できた。研究結果は、低光度・近傍と高光度・遠方AGNが異なる種族という証拠は得られなかったことを意味し、遠方宇宙でより重い銀河やSMBHが形成されるダウンサイジングの起源に迫る重要な内容である。Stripe 82天体については、1型/2型の性質の相違を調べAGN統一モデルの検証を行えた。image解析を利用することで母銀河とAGNの放射を切り分けるSED解析は、将来検出されるAGNに応用でき、SMBH・銀河進化研究にも寄与できる。BASS天体は電波干渉計ALMAの観測データ解析が予定されており、銀河・SMBH進化を制御するAGNジェットやアウトフローの議論が可能となる。本研究はその足がかりとなった。Stripe 82サンプルについての研究は複数の研究会にて発表しており、論文も2023年度に出版された。BASS サンプルの研究も論文投稿準備中である。以上から、進捗は概ね順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度なので、該当しない。
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