2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J23211
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大島 國弘 京都大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 有機薄膜トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,有機薄膜トランジスタ(OTFT)を用いたフレキシブルで大面積なセンサ回路をバッテリーフリーで動作させることにより,生体に湿布のように貼り付けるだけで生体の活動情報等を取得し続けるセンサ回路を実現することを目的とするものである.とりわけ今年度は,Si-MOSFETのCMOS論理素子に相当する,p型OTFTとn型OTFTの相補動作を用いた論理素子(OTFT-CMOS論理素子)の安定動作の実現を目的とする. センサ回路では,回路の重量や体積,価格といった点から大容量電源の確保が困難であり,消費電力の極小化が求められる.他方,取得したセンサ情報のアナログ/デジタル変換等の処理には,OTFTの性能に対して高速な論理回路が求められる.このため,低消費電力と動作速度を両立可能なCMOS論理を用いた回路設計が不可欠である.しかし,OTFTにおいては,n型OTFTは,p型OTFTと比較してキャリア移動度等の特性に劣りオン電流が小さいため,論理出力のプルダウンすなわち論理値0出力が弱く,OTFT-CMOS論理回路において安定して0Vを出力できない課題が存在した.そこで本研究では,p型OTFTのオフ状態リーク電流の原因となる層間接触に着目し,p型OTFTのオフ状態リーク電流を低減可能なOTFTレイアウトを示した.加えて,NOT論理,2入力NAND論理,2入力NOR論理のOTFT-CMOS論理回路を試作し,これらの論理素子においてリーク電流を低減したレイアウトでは論理値を安定してプルダウン可能であることを示した.この成果により,OTFT回路において,低消費電力と動作速度を両立可能なCMOS論理回路を安定して動作させることが可能になったと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,OTFT-CMOS論理回路の安定動作に取り組み,OTFT論理素子の安定動作を実現した.これは,当初の研究計画である,バイアス・ストレス劣化に対するOTFT の特性変動モデル,劣化による特性変動に対してロバストなOTFT 回路技術のうち,後者の課題の解決に寄与する技術であると考える.特性変動モデルに関しては,今年度の成果に基づきOTFT劣化特性のOTFTレイアウト依存性が予想されることから,劣化物理現象の切り分けと劣化要因毎の正確なモデル化が必要となるため,これらの要件を満たす実験手法の検討を進める必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究成果に基づき,追加で検討すべき事項の存在が判明したOTFT特性変動モデルに関して,実験手法の検討と実験準備を進め,測定・モデルの提案を行う.また,当初の研究計画にあるオンチップ回路電源に関して,エネルギーハーベスト,無線給電,空気電池や全固体電池,スーパーキャパシタ等の回路電源候補を,回路に必要な電力を供給可能か,製造コスト,フレキシブル基板の曲げ伸ばしへの耐性等の観点から比較し,試作・評価を進める考えである.さらに,OTFTセンサ回路に向けた低電圧での書き込みが可能で不揮発性の記憶素子に関してチップ作製・測定を進めており,得られた性能に応じてオンチップRAMや物理複製困難関数回路(PUF)等の応用を検討する.
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