2021 Fiscal Year Annual Research Report
冪単部分群の座標環のクラスター構造の加法的圏化と乗法的圏化の関係について
Project/Area Number |
21J23226
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池田 湧哉 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | クラスター代数 / 量子群 / 圏化 / 箙多様体 / クリスタル / R行列 / 前射影代数 / 旗多様体 |
Outline of Annual Research Achievements |
1つ目として修士論文から派生したテーマとして、クリスタルや量子群の表現へのCactus群作用の圏論的、幾何的実現を行った。Cactus群は、たとえばクリスタルたちのなす圏にテンソル積の順番を入れ替える操作によって自然に作用することが知られている(外部作用)。一方でA型の場合Howe双対の類似によって、この作用はクリスタルそのものへの内部作用も引き起こす。(そして実際はA型以外にもそのような作用がある。) 修士論文で考えたのはこの内部作用についてである。 内部作用は具体的に部分Schutzenberger対合という対合によって実現される。一つの結果として、有限型の場合、最も大きいSchutzenberger対合は箙多様体上の自己同型あるいは前射影代数上の加群圏上の関手として、双対と最長元のreflectionの合成によって実現されることがわかった。 その他の部分Schutzenberger対合については、前射影代数の加群圏の上の関手や箙多様体の射として直接は実現できないが、圏や多様体を適切に分割することで実現できることがわかった。 2つ目として、クラスター代数の圏化の一つとして箙多様体のサイクルや連接層の圏を考えるというテーマが挙げられる。具体的には、ここで注目するのは旗多様体(やその二重Bruhat cell)の座標環に入るクラスター代数の構造である。このような座標環にはリー環の作用があるので箙多様体のホモロジー群と思うことができる。この見方においてはクラスター代数の関係式は(適切なウェイトの箙多様体の部分多様体としての)テンソル積多様体のホモロジー群の関係式として捉えられる。クラスター代数の圏化でよく計算される幾つかの量(たとえば乗法的圏化におけるR行列の分母の次数など)をテンソル積多様体や箙多様体の幾何を使って計算することを期待しており、これについては現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
修士論文のテーマについて深めていたため当初のテーマについてはやや遅れていると感じています。
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Strategy for Future Research Activity |
今年は当初のテーマに集中したいと考えている。クラスター代数の2つの圏化として一方を上で述べた箙多様体の上のサイクルや連接層の圏をとり、もう片方を前射影代数の加群圏によってとる。箙多様体の点は前射影代数の一つの加群を表すが、実際には安定なものに限られているため直ちにこれら二つを結びつけることはできなかった。一方でSavage, Tingleyによると箙多様体の冪零部分多様体はある特別な前射影代数上の加群の箙グラスマニアンとして実現できる。この方法によって前射影代数上の加群を直接箙多様体と結びつけることが可能であると考え、いくつかの技術的(だと現状思われている)問題を乗り越えることで具体的な計算につなげることができると考えている。
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