2021 Fiscal Year Annual Research Report
連れションにみる行動伝染と社会ネットワーク:大型類人猿の比較研究
Project/Area Number |
21J23227
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大西 絵奈 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | チンパンジー / 行動伝染 / 排尿 |
Outline of Annual Research Achievements |
飼育チンパンジーの観察をもとに、排尿生起率の個体差と時間帯ごとの頻度を踏まえたシミュレーション値と観察値を比較した結果、観察値の排尿同期率が68秒以内により高かったため、チンパンジーの排尿タイミングが同期している可能性に着目した。2019年、2020年の観察データをもとに分析をおこなった結果、排尿行動は個体差が激しく、生起しやすい時間帯や総排尿回数が個体ごとに異なることがわかった。また、排尿に明確な周期性は見つけられなかった。この結果はThe 17th International Symposium on Primatology and Wildlife Scienceにて発表をおこなった。排尿同期に関する社会性の影響についても分析をおこなったが、排尿の生起率が低く、結果を議論するにあたって十分なサンプルサイズが確保できなかったため、2021年9月から11月にかけて京都大学熊本サンクチュアリにて飼育チンパンジーの追加観察を行った。2019年、2020年、2021年のデータを比較した結果、毛づくろい・近接の中心性やネットワークに社会関係の変化は見られなかった。その為3年分のデータをもとに、60秒以内に生起した他個体との排尿同期におけるイニシエイターとフォロワーの社会的特徴を分析した結果、社会的中心性の高い個体ほど他個体の排尿に続いて排尿する傾向があった。この結果はThe 17th International Symposium on Primatology and Wildlife Scienceにて発表し、また2022年8月に行われるInternational Society for Behavioral Ecology Congress 2022での発表も決定している(査読あり)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は大型類人猿の種間比較を計画していたが、新型コロナウイルス感染症により国内外での動物の直接観察が困難となったため、申請者の所属する研究所での飼育チンパンジーの観察に限られた。チンパンジーの観察においても、研究所の大規模工事による騒音の影響により観察に制限があり、排尿行動の生起率が低いことからも長期間のデータ収集が必要とされたため進捗状況がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画段階では、国内では十分な数での複数飼育が行われていない大型類人猿の観察のために国外のフィールドで調査を行う予定であったが、コロナウイルスの影響で渡航が困難となった。しかしコロナウイルスによる渡航困難の状況は少しずつ好転しているため、今後も柔軟に対応しながらチンパンジー以外の大型類人猿の観察の機会を伺う予定である。現時点では飼育チンパンジーのデータをまとめることに専念し、発表や論文執筆に努めてる。
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