2021 Fiscal Year Annual Research Report
破僧に関するインド仏教説話の研究 -『根本説一切有部律』「破僧事」を中心に-
Project/Area Number |
21J23246
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小南 薫 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 「破僧事」 / 『根本説一切有部律』 / デーヴァダッタ / 仏伝 / 説話 |
Outline of Annual Research Achievements |
仏滅後のインドにおける有力部派(教団)の一つであった根本説一切有部が伝える律蔵『根本説一切有部律』中の「破僧事」について、基礎研究と内容分析を行った。 基礎研究については、梵文写本を用い、蔵訳と漢訳を比較対照した批判校訂テキストの作成とそれに基づいた翻訳を進めた。今年度は特に「破僧事」後半部分のデーヴァダッタ説話の部分のテキスト研究を行った。作業を進める中で、既存の校訂テキストにおける誤りや不十分な情報についても改善することができた。 加えて、上記の基礎研究をもとに内容分析を行い、学会でその成果を報告した。まず、「破僧事」に見られるデーヴァダッタの授記について検討し、他部派の律文献に見られるデーヴァダッタ物語や、同じくデーヴァダッタの授記を記述する別の文献との比較考察を行った。これについては、2021年度密教研究会学術大会にて口頭発表し、同学会誌『密教文化』に和文論文を投稿した。また、デーヴァダッタが提唱したとされる五法についても、「破僧事」と他部派の律文献の内容とを比較し、その伝承について考察した。これについては、日本印度学仏教学会第72回学術大会にて口頭発表し、同学会誌『印度學佛教學研究』(Journal of Indian and Buddhist Studies)に英語論文を投稿した。 また、参加予定であった国際学会については新型コロナウイルスの影響により延期された。一方、オンライン会議を通じて多くの研究会に参加することができ、本研究課題遂行のための有益な意見交換を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
内容分析に関しては、基礎研究を進める中で注目すべき点が予想以上に多く見られた。その一部として、上記の通り、デーヴァダッタの授記と五法について成果を発表することができた。ただし、内容分析の方に多くの時間を費やしたため、基礎研究となるテキスト研究を当初予定していたほど進めることができず、その点でやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、引き続き基礎研究となるテキスト研究を中心に、関連文献との比較も行いながら内容分析を進めていく。また、次年度末よりカナダのマクマスター大学への留学を予定している。予定通りに渡加することができれば、専門家の元でテキスト校訂や内容分析についての指導を仰ぐ。
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