2022 Fiscal Year Annual Research Report
時空の幾何から探るブラックホールの情報問題と量子重力理論のメカニズム
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22J00663
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
後藤 郁夏人 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2027-03-31
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Keywords | ホログラフィー原理 / ブラックホール / 量子重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はブラックホールの情報回復メカニズム及び量子重力における時空創発メカニズムを 解析することで一般相対論と量子論を整合的に融合する量子重力の仕組みを明らかにすることである。当初の研究計画に含まれていた時空の幾何に基づく研究を進めると同時に、重力ホログラフィー原理及び量子情報理論の手法を用いた研究を開始した。とくに量子重力のミクロな自由度から、低エネルギー極限で如何に滑らかな時空描像が創発するか、という観点から低次元量子重力理論を用いた研究を行った(JHEP09(2022)069)。この研究では”重力の経路積分”という、時空の幾何に基づき量子重力を近似的に計算する方法を用いて、SYK模型と呼ばれる2次元量子重力をホログラフィックに記述すると期待される量子力学系から如何に時空のワームホール構造が生じるのかを明らかにした。それと並行して、量子情報理論の技術を用いてホログラフィー 原理における時空創発のメカニズムを研究した(JHEP06(2022)100,Physical Review D, 106 (2022) 12)。JHEP06(2022)100では古典計算困難性を定量的に量る”マジック”という量子情報論的量とホログラフィー原理における時空創発の関係を調べた。Physical Review D, 106 (2022) 12では量子エンタングルメントを通して、観測者による観測行為がホログラフィック双対の時空のどのようなダイナミクスをもたらすのか研究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
従来予定していた”重力の経路積分”という、時空の幾何に基づき量子重力を計算する方法を用い時空創発メカニズムを研究したことに加え、量子エンタングルメントや古典計算困難性を定量的に量る”マジック”という量子情報論的量を通してホログラフィー原理における時空創発の研究も行えた点で、当初計画していた以上の研究の進展があったと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行った、SYK模型と呼ばれる2次元量子重力をホログラフィックに記述すると期待される量子力学系から如何に時空のワームホール構造が生じるのかを明らかにした研究、古典計算困難性を定量的に量る”マジック”という量子情報論的量を用いたホログラフィー原理における時空創発のメカニズムの研究、これらの知見、技術を融合し更にホログラフィー原理のメカニズムの理解を進展させる。
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Research Products
(7 results)