2023 Fiscal Year Research-status Report
Comprehensive Research on Primordial Density Fluctuations and Quantum Gravity Theory in Quantum Genesis of the Universe
Project/Area Number |
22KJ1782
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松井 宏樹 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 量子宇宙論 / 一般相対論 / 量子重力理論 / 場の量子論 / 量子情報理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度と引き続き量子重力理論の枠組みに基づいた量子宇宙創生の可能性を研究した。取り分け、 Horava-Lifshitz 重力理論の枠組みでハートル・ホーキング無境界仮説を検証した。Horava-Lifshitz 重力理論は量子重力理論の候補の一つであり、Projectable形式においては、繰り込み可能性とユニタリー性が厳密に証明されている。本年度の主要な研究成果として、Horava-Lifshitz 重力理論でハートル・ホーキング無境界仮説を、ローレンツ型経路積分を用いて定式化に成功したことである。具体的には、均一で等方的な局所的閉じた宇宙のセットから成るグローバル宇宙に焦点を当て、局所宇宙間の量子もつれを含むグローバル宇宙の無境界波動関数を発見した。この量子もつれはグローバルハミルトニアン制約、つまり暗黒物質としての重力的な積分定数の総和がゼロでなければならないという制約から生じる。また、ディリクレとロビン境界条件における無境界波動関数の定式化を研究した。ディリクレ境界条件の場合、高次元オペレーターによるHorava-Lifshitz作用の発散が原理的に起こる問題があるが、重力定数の繰り込み群フローから緩和できる可能性があることを指摘した。一方で、ロビン境界条件では、初期超曲面上の特定の虚数ハッブル膨張率を持つ場合、無境界波動関数がHorava-Lifshitz 重力理論において無矛盾に定式化されることを示した。また、局所宇宙間の量子的もつれの存在は、Horava-Lifshitz重力理論が提供する宇宙の量子論的記述の新たな側面を浮き彫りにした。さらなる研究によって、これらの結果が宇宙観測どのように関連するかを探ることが期待される。また、初期特異点において宇宙の波動関数が消失するというDeWitt仮説をローレンツ型経路積分で定式化する手法を考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、量子重力理論の枠組みにおける宇宙の波動関数の解析において注目すべき成果を挙げました。Horava-Lifshitz 重力理論を用いたハートル・ホーキング無境界仮説の検証は、量子宇宙創生に関する理解を深める上で重要なステップとなります。この理論は、繰り込み可能性とユニタリー性の観点からも優れた特性を持っており、その枠組み内で無境界波動関数を定式化できたことは、大きな進歩です。また、ディリクレおよびロビン境界条件の下での無境界波動関数の挙動についての研究は、これらの境界条件がHorava-Lifshitz 重力理論の予測にどのように影響を与えるかを理解するための基礎を築きました。特に、ロビン境界条件における無境界波動関数の矛盾なき定式化は、理論の整合性を支持する証拠となります。これらの研究成果は、理論の確立だけでなく、将来の宇宙観測との関連性を模索する基盤としても極めて有意義です。今回の研究成果は、宇宙の最も初期の状態を理解するための鍵となり得るため、研究は概ね順調に進展していると言えます。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、Horava-Lifshitz 重力理論に基づく現在の成果をさらに深化させるために、量子重力理論の波動関数の様々な解析手法について比較検討を進めることが有効です。その為、場の量子論の非摂動論的定式化を応用した量子宇宙論の研究を展開します。量子重力の経路積分手法から宇宙の波動関数や原始密度揺らぎ、原始重力波の系統的な解析手法の確立を研究します。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由については、学術条件整備費による執行によるものであり所属機関である京都大学の使用によるものである。
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