2023 Fiscal Year Research-status Report
厳格対位法の伝統と「古典派」の弦楽四重奏--転回技法を中心に
Project/Area Number |
22KJ1788
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 圭代 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 対位法 / 弦楽四重奏 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、18世紀半ば以後、いわゆる「古典派」の美的規範の確立に、18世紀半ば以前の対位法の伝統がどのようにかかわったかを明らかにすることである。「古典派」の三大巨匠とされるハイドン Franz Joseph Haydn(1732-1809)、モーツァルト Wolfgang Amadeus Mozart(1756-1791)、ベートーヴェン Ludwig van Beethoven(1770-1827)を中心に、彼らの楽曲に加え、彼らが習得した対位法、当時の音楽理論書や言説をも分析対象とする。 第二年度にはモーツァルトの弦楽四重奏曲と、対位法を多用した楽曲をジャンルを問わず取り上げ、J. S. バッハ Johann Sebastian Bach(1685-1750)の対位法とのかかわりを中心に探究した。モーツァルトがバッハの音楽より何かしらの影響を受けたにちがいない、との推測は長きにわたってなされてきたが、その実態を具体的に論じることはたやすくない。筆者は対位法的観点からの分析をとおし、その受容がいつどこでなされたのかを精確に推定することは難しいものの、モーツァルトが主に習作や断片においていくつかの対位法的技法を集中的に習得し、(和声的ではなく)対位法的な音の選びかたにもしだいに習熟し、楽曲内でそれらを時に難度を高めつつもちいたことを示した。更に、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンが対位法の理論を習得、教授した際の書き込みを手掛かりに、楽曲内で対位法の規則をどの程度厳格に適用すべきと彼らがとらえていたのかについても、考察を深めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二年度にはモーツァルトの弦楽四重奏曲と、対位法を多用した楽曲をジャンルを問わず取り上げ、18世紀半ば以前の対位法とのかかわりを検証するにあたっての基礎を固めることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
第三年度にはハイドンの弦楽四重奏曲を、モーツァルトの弦楽四重奏曲への影響が指摘されているものを中心に対位法的観点から分析したのち、研究のまとめに入りたい。
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Causes of Carryover |
基金化により柔軟な執行が可能となったため、第三年度の成果の発表にあてたい。
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Research Products
(1 results)