2023 Fiscal Year Annual Research Report
運慶の作風変遷について-鎌倉時代前期における仏像制作の実態に着目して-
Project/Area Number |
22KJ1796
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨岡 采花 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 運慶 / 興福寺 / 東大寺 / 南都再興造営 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、鎌倉時代彫刻の大成者とされる仏師運慶による仏像制作の実態解明、および実証的な作風解釈の構築を目指すものである。前年度の研究成果をもとに、本年度は治承兵火に伴う再興造像に焦点を当て、その最初期の事例である興福寺西金堂釈迦如来像と運慶一門の事績上一画期をなした東大寺大仏殿四天王像について検討を行った。興福寺西金堂像については、現存する木造仏頭および光背附属と思しき化仏・飛天像について、前年度の課題であった実地調査を行い、制作当初の姿の復元を試みた。その上で、従来指摘されてこなかった飛天光背としての位置付けを検討すると共に、その表現契機について西金堂縁起の変遷に着目して考察し、その成果を京都大学文学部美学美術史学専修の研究集会(「興福寺木造仏頭・化仏・飛天をめぐる一考察─縁起の変遷に着目して─」2024年3月)で発表した。東大寺大仏殿四天王像については、大仏殿創建当初に安置された像から運慶による再興像にいたるまで基本的形式における変更はなかったと従来指摘されてきた像容について、持国天像の右手持物が三鈷杵へと、多聞天像の面貌が特殊な開口表現へと改変された可能性を新たに指摘した。そしてこれらが正法の護持の表象であり、仏法の護持という南都復興の理念と通じることを指摘し、第76回美術史学会全国大会(「建久再興東大寺大仏殿四天王立像の像容と役割をめぐる一考察─多聞天像の開口表現に着目して─」2023年5月)で発表した。研究期間全体を通じて、とりわけ南都仏教界の思想との関わりから新たな作品解釈を構築できたことは重要な成果といえる。
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