2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of noncommutative rational functions in terms of free probability
Project/Area Number |
22J12186
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮川 明裕 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 自由確率論 / 非可換有理関数 / qガウス分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は確率変数から可換性を排除した非可換確率論の枠組みにおいて、非可換な確率変数達から作られる有理関数を解析することが目的である。これまでの研究成果の一つ目に非可換有理関数に関する分布収束に関する共著論文を書き、特に非可換有理関数から得られるランダム行列の経験固有値分布に関する結果を残した。二つ目に確率論における独立性の非可換な派生である自由独立性を満たす半円分布達から作られる作用素が非可換有理関数であることと、Dual systemと呼ばれる作用素との交換子が有限階数であることが同値であるという非可換有理関数の特徴づけに関する結果を残した。三つ目に量子物理的な視点で独立なガウス分布をパラメータqで変型したqガウス分布達に対して、二つ目の研究成果で書いたDual systemが存在し、自由確率論におけるエントロピーが自明な場合を除き常に有限であるという共著論文を執筆した。これら3つの論文はそれぞれMathematische Annalen、Journal of Functional Analysis、Advances in Mathematicsに昨年度アクセプトされ出版された。さらに、これらの研究成果に関する発表をRIMS研究集会「作用素環論の最近の進展」や台湾で開催されたEast Asia Core Doctoral Forum in Mathematics といった国内外の研究集会での発表や、京都作用素環セミナー、UC Berkeley Probabilistic Operator Algebra Seminarといったセミナー発表を行なった。まだ非可換有理関数の確率分布に関する解析的な性質やDual systemを持つ一般の非可換確率変数に対する有理関数の特徴づけに関しては十分にわかっていないため、残りの期間で解決したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今まで非可換有理関数に関する分布収束に関する研究、確率論における独立性の非可換な派生である自由独立性を満たす半円分布達から作られる非可換有理関数のDual systemと呼ばれる作用素との交換子を用いた特徴づけ、独立なガウス分布をパラメータqで変型したqガウス分布達のDual systemの存在に関する研究成果を残し、共著を含めた3つの論文がジャーナルにアクセプトされた。さらに、これらの研究成果に関する発表をRIMS研究集会「作用素環論の最近の進展」をはじめとした国内外のセミナーや研究集会で行った。さらに昨年度はコロナ禍が終わったため、積極的に海外を訪問し、アメリカ、ドイツ、台湾でセミナー発表や学会発表を行い、海外の研究者達との議論を通じて新たな研究トピックを見つけることが出来たため、研究活動は順調であると考えている。一方研究課題について未だ解決していない問題がいくつかあるため、新しい研究成果が残せるように努めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
非可換有理関数の特徴づけで現れたDual systemに関してはqガウス分布という興味深い対象について示すことができたので、次の課題としてqガウス分布は自由独立な半円分布達が満たすような非可換有理関数の特徴づけを満たすかという問題を考えており、それは今後も考えていきたい。 また更なる課題としてDual systemが非可換有理関数の確率分布にどのような影響を及ぼすのかという問題がある。Atomの情報はすでに先行研究により知られているが、絶対連続性やサポートに関する情報は簡単な例でしか知られていないため、これらを解決することを目標として研究を行なっていきたい。 また11月にはカナダのFields instituteで行われる作用素環のプログラムの自由確率論のセッションで講演するため、それに向けて新しい結果を出せるようにしたい。この発表の他にも、国内外を問わず講演の機会があれば積極的に発表して、国内外の研究者達と交流していきたい。
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