2022 Fiscal Year Annual Research Report
物質移動が木質部材の火災後の燃え止まり現象へ及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
22J13775
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
孫 安陽 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 木質構造部材 / 燃え止まり / 耐火 / 熱物質移動 / 数値解析 / カラマツ / 熱伝導率 / 平衡含水率 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、主に以下の研究を行った。 1.加熱を受ける木質部材の火災全過程における熱・物質移動解析モデルの構築:木質部材の火災全過程での燃焼挙動を予測するため、火災時の部材内部の熱移動及び気体、液水の物質移動を考慮した解析モデルを作成した。解析モデルでは炭化層の酸化燃焼、木質部材の熱分解および熱分解により発生した可燃性ガスの燃焼、水分の蒸発および凝縮を考慮した。解析結果と比較するため、既往研究で行われた小型加熱炉によるカラマツ壁の耐火実験での測定結果と比較した。解析モデルでは、実験で測定した温度分布をほぼ再現することができた。 2.木質部材の平衡含水率と寸法変化率測定:木質部材の水分の蒸発速度は、部材の平衡含水率との関連が大きい。解析モデルで多種類の木材を分析可能とするため、8種類の木質部材小片試験体の平衡含水率測定実験を行った。試験体を各種湿度に調節された気密ボックスに設置して吸湿と放湿を行い、8種類の木材の吸着等温線を得た。また、木質部材の火災後の再使用を想定し、150℃で加熱された後の試験体の平衡含水率も測定した。その結果、150℃で加熱されると平衡含水率は、約2割低下し、水分保持力が劣化することを示した。平衡含水率の測定と併せて、含水率の変化による寸法変化率も測定した。試験体の寸法変化は含水率に比例し、切線方向、半径方向、軸方向の順で寸法変化率が減少する。 3.亀裂を含む炭化層の等価熱伝導率測定:加熱を受ける木質部材は、炭化や乾燥収縮により表面で亀裂が発生する。亀裂の生成により表面からの流入熱流が増加する。この流入熱流の増加を炭化層の等価熱伝導率として表すため、コーンカロリーメーターでカラマツ試験体に炭化層を形成し、各種温度での炭化層の等価熱伝導率の測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は火災加熱を受ける木質部材の熱物質移動を分析する計算モデルを作成し、既往のカラマツ耐火試験で測定された温度および含水率分布と比較した。計算モデルは加熱時の試験体内部の温度と含水率分布を概ね再現することができた。 また、基礎的な物性値を取得するため、測定実験を行った。本来は部分的に炭化した木材の熱伝導率を測定する必要があるが、炭化層表面の亀裂が等価熱伝導率へ及ぼす影響が非常に重要であるため、コーンカロリーメーターを用いて亀裂を含む炭化層の等価熱伝導率を測定した。また、各種木材の平衡含水率も測定した。計画した今年度の研究目標がほぼ達成され、研究が概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画から大きな変更がない。今年度は解析モデルの構築と基礎的な物性値の収集を行う。来年度は解析モデルをさらに改良し、その後モデルを用いて網羅的解析を行い、燃え止まりが発生する条件を検討する。 ただし、本来ではモデル検証のため加熱実験を行うことを計画したが、これまで木質部材の耐火実験が多く行われたため、新たな燃焼実験を実行せず、既往の実験結果を用いて解析モデルの検証を行う。その代わりに、炭化層亀裂による表面に流入する放射熱流の増大作用を表すための亀裂モデルを検討し、これまで作成した火災時の木質部材の熱物質移動モデルの改良を行う。
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