2022 Fiscal Year Annual Research Report
間文化哲学の基礎づけ:ハイデガーの「民族」概念の批判的再検討を通じて
Project/Area Number |
22J14495
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 悠汰 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ハイデガー / 真理 / 民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の課題は、①ハイデガーの「民族」概念についての文献的研究、②間文化哲学についての応用研究である。2022年度は、課題①のハイデガーの文献研究に取り組んだ。特に、「民族」概念の解明に不可欠な「真性Wahrheit」についてのハイデガーの思索を追跡した。 ハイデガーの「真性」の探求は、彼の主著『存在と時間』(1927)以来のものであるが、特に1930年の講演「真性の本質について」において探求の転換点が見出されうる。これについて、2016年に刊行された講演諸原稿を用いて追跡し、関西ハイデガー研究会にて研究報告を行った。 また彼の「真性」の探求を追跡するさいの重要著作である『芸術作品の根源』(1935/36)について、2020年に公刊された講演諸原稿を用いながら、1930年以後の思索の歩みにおけるプラトンのイデア論に対する批判から考察し、「真性」と「芸術作品」の関係を明らかにした。この成果は、関西哲学会の学会誌『アルケー』に掲載され、第10回関西哲学会研究奨励賞を受賞した。 さらに『芸術作品の根源』において言及される「芸術作品」と「民族」の関係について、『言葉の本質への問いとしての論理学』(1934)と『ヘルダーリンの讃歌『ゲルマーニエン』と『ライン』』(1934/35)という二つの講義録を読解し、「詩作」と「見守り」の観点から詳らかにした。この成果は、京都大学大学院人間・環境学研究科で行われる思想文化論セミナーにおける研究報告に反映された。 上記に加えて、精密な文献研究にとって不可欠な草稿調査をドイツのマールバッハの文書館にて行った。特に一週間の研究滞在において、『言葉の本質についての論理学』の草稿調査に注力し、次年度の研究の土台を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、コロナの影響もあり国際学会への参加はかなわなかった。しかし、文献研究を中心に地道に進捗を産み出し、ドイツの文書館での文献調査を実現できた。この成果は、次年度の研究の土台となる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きハイデガーに関する文献研究を進め、博士論文としてまとめる予定である。間文化哲学に関しては、9月にEuropean Network of Japanese Philosophyにおいて偶然性を主題としたハイデガーと九鬼周造の比較研究を発表する予定である。これらに加えて、再びドイツの文書館に訪問し文献調査を行い、今後の研究の更なる発展に役立てたく思っている。
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