2023 Fiscal Year Annual Research Report
カニクイザルを用いた造血幹細胞の分裂メカニズムの解明
Project/Area Number |
22KJ1872
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大嶋 慎一郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 造血幹細胞 / 非ヒト霊長類 / シングルセル解析 / 加齢 |
Outline of Annual Research Achievements |
造血幹細胞(Hematopoietic Stem Cell: HSC)は、自己複製能と多分化能によって定義され、生涯にわたり全ての血液細胞を供給する。HSCは成人では骨髄に安定的に存在するが、胎児期では肝臓や胎盤など複数臓器を移動するなど、発生過程に伴うHSC多様性変化やその分裂制御機序については不明な点が多い。そこで、本研究では、非ヒト霊長類カニクイザルを用いることで胎児期から成体期までの幅広い時期を狙って採材することを可能とし、機能解析およびシングルセル遺伝子発現解析を中心とした網羅的比較解析によって以下の新規知見を得ることができた。 まず、カニクイザル胎児期における主要な造血部位と時期を同定する為、免疫不全マウスへの移植実験を行い、胎児肝臓では妊娠第1期後半から第3期前半までの比較的長期間、胎児骨髄では妊娠第2期後半以降で、造血していることを同定した。次に、移植可能なHSCをセルソーターで単離するための細胞表面マーカーを探索し、CD34陽性CD38陽性CD45RA陰性CD90陽性CD33陰性の区分に純化されることを同定した。そして、純化されたHSC集団をシングルセル遺伝子発現解析によって詳細に比較解析することにより、各発生段階における造血幹・前駆細胞の多様性の相違点や胎児期特異的な血球分化経路の解明に至った。具体的には、骨髄球/リンパ球系前駆細胞は胎児発達過程で増加するが、赤血球/血小板系前駆細胞は減少していた。また、HSCから巨核球前駆細胞への直接的な分化バイパス経路を同定した。さらに、カニクイザルHSCをより高純度で分取するための10個の細胞表面マーカーをデータ解析により発見した。 以上の大規模なデータセットを構築することによって、カニクイザル造血理解および前臨床モデルとしての利用促進に繋がるのみならず、ヒト造血研究の更なる発展にも寄与することができる。
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