2022 Fiscal Year Annual Research Report
巨大リポソームを用いたABCA1の脂質輸送機構の解明
Project/Area Number |
22J14975
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
坂田 和樹 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ABCA1 / コレステロール / 脂質 / HDL / リポソーム / タンパク質精製 |
Outline of Annual Research Achievements |
ATP-binding cassette A1(ABCA1)はATPのエネルギーを利用して機能するABCタンパク質の一つであり、高密度リポタンパク質(HDL)を産生することで動脈硬化症の予防に大きく貢献している。ABCA1はコレステロールを含む様々な脂質を排出することが報告されているが、それらの脂質をどのように排出するかについてはほとんど解明されていない。本研究では、人工脂質粒子(リポソーム)を用いてHDL形成反応を人工的に再現し、ABCA1による脂質輸送の詳細を明らかにすることを目的とした。 まず、ヒト細胞に発現させたABCA1を精製し、リポソームに再構成して脂質がABCA1のATP加水分解活性に与える影響を解析した。その結果、負電荷脂質存在下でABCA1のATP加水分解活性はコレステロールによって誘導されることが明らかとなった。一般的にABCタンパク質の基質はATP加水分解活性を誘導するため、ABCA1はコレステロールを基質として認識することが示唆された。また、ABCA1のATP加水分解活性は植物ステロールによってほとんど誘導されなかったことから、ABCA1によるコレステロール認識は厳密であることが示唆された。 続いて、ABCA1によるHDL形成を人工的に再現するために、初期段階として精製ABCA1を巨大リポソームに再構成する手法の開発を目指した。2022年度の研究では、リポソーム融合法の最適化によりABCA1を巨大リポソームに組み込むことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ABCA1のATP加水分解活性の解析により、ABCA1の機能に負電荷脂質が重要であること、ABCA1がコレステロールを認識することを示唆する結果を得た。 また、ABCA1を巨大リポソームに再構成する手法の構築に成功した。この成果を足掛かりにしてHDL産生を人工的に再現し、ABCA1の脂質輸送の詳細を明らかにすることが期待できる。しかし、ABCA1ほどの分子量の大きい膜タンパク質を巨大リポソームに再構成させた例は未だかつてなく、再構成手法の開発には時間を要した。そのため、当初の計画と比べてやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、ABCA1がATP依存的に巨大リポソーム内部にHDLを産生するか検証する。次いで、形成したHDLの粒径の測定や、HDL中の脂質の定量といったABCA1の脂質排出を評価する系を確立し、コレステロールを含む様々なステロールやリン脂質について各々の脂質排出速度を測定する。併せてATP加水分解活性の誘導を指標に、ABCA1が輸送するステロール、リン脂質を同定する。さらに、ATPと脂質のストイキオメトリー解析や、活性制御タンパク質がHDL産生に与える影響の解析を行う。以上のような方策でABCA1による脂質輸送の詳細を明らかにしていく。
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