2022 Fiscal Year Annual Research Report
非天然型D/L-セルロースの合成による,天然セルロースの分解機構解明と応用利用化
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22J15159
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池上 和岐 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | セルロース / セロビオース / キラリティ / エナンチオマー / ジアステレオマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「研究の目的」に、天然セルロースがD-グルコースからのみから成る多糖高分子(D体)であるのに対して、L-グルコースからのみ成る多糖高分子(L体)およびD-グルコースとLグルコースの共重合体である多糖高分子(D/L体)の非天然セルロースを化学合成し、天然セルロースのキラル性が物性に与える影響を検討し、その知見に基づくD-セルロースのキラル性を利用した新たな高付加価値利用の開発および更なる高機能性をもつセルロース由来材料の創出を挙げている。「研究実施計画」に基づき、研究初年度である本年度は、主な研究成果として、下記2点を得た。 ①DL-セロビオース合成・物性解析:非天然である、L,L-セロビオース・D,L-セロビオース・L,D-セロビオースの3化合物を新規に化学合成した。天然セロビオース(D,D-セロビオース)とそれら化合物、計4化合物のアセチル誘導体の融点と結晶構造を測定したところ、エナンチオマーの関係にある化合物間で物性は一致し、ジアステレオマーの関係にある化合物間では異なるという結果であった。この結果より、目的化合物の合成が確認された。 ②L-およびD/L-セルローストリアセテートの合成:D/L 比 10/0 から 0/10 の D/L-セルロースを化学合成し、光学分割能などの物性解析を目指してトリアセチル誘導体化に供した。NMRスペクトル測定により、目的化合物の合成が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、DL-セロビオースおよびD/L-セルロース誘導体はいずれも、合成は良好に達成された。DL-セロビオースでは、途中高純度の目的化合物を得るのに難航したものの、最終的には高収率で十分量の、DL-セロビオース誘導体を得ることに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のところ、研究が当初の研究計画に沿って順調に進展していることから、研究二年度では、研究初年度に引き続き、初年度で合成したD/L-セルロース誘導体の物性解析を行う。①光学分割能調査:初年度の研究で得た、L-およびD/L-セルローストリアセテートについて、光学異性体に対する吸着挙動を測定することで、光学分割能とキラル性の関連性について検討する。②液晶形成能調査:D/L-セルロースのコレステリック液晶形成能を調査する。エチル誘導体化物についてCDスペクトル測定をもちいて測定する計画である。
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