2023 Fiscal Year Annual Research Report
非天然型D/L-セルロースの合成による,天然セルロースの分解機構解明と応用利用化
Project/Area Number |
22KJ1883
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
池上 和岐 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | セルロース / セロビオース / キラル / ジアステレオマー / エナンチオマー / 構造最適化計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然セルロースは、D-グルコースからのみから成る多糖高分子(D体)である。本研究では、天然セルロースのキラル性が物性に与える影響の検討、および得られた知見に基づくD-セルロースのキラル性を利用した新たな高付加価値利用の開発と更なる高機能性をもつセルロース由来材料の創出を目的とした。そのために、非天然型セルロースである、L-グルコースからのみ成る多糖高分子(L体)、D-グルコースとLグルコースの共重合体である多糖高分子(D/L体)、および2糖モデル化合物となるL,L-セロビオース・D,L-セロビオース・L,D-セロビオースを化学合成し、天然型との構造物性比較を試みた。研究最終年度となる本年度は、主な研究成果として、下記3点を得た。 ①DL-セロビオースアセテートの構造物性解析:L,L-・D,L-・L,D-セロビオースについて、そのアセチル誘導体化物をCP/MAS NMRスペクトル測定を用いて分子構造を解析し、非天然型では結晶性が低下すると見出した。また、VCDスペクトル測定等を用いて光学特性を調査し、D,L-・L,D-セロビオースでは、官能基間で光学活性が相殺されていた。 ②量子化学計算によるDL-セロビオースの構造解析:DFT法 による、化合物の配座探索、構造最適化一点エネルギー計算を行い、非天然型セロビオースの構造を推定した。得られた構造は、実験により得られた結果と整合性がとれるものであり、実験結果を理論面から説明可能となった。 ③L-およびD/L-セルローストリアセテートの物性解析:D/L 比 10/0 から 0/10 の D/L-セルロースおよびL-セルロースのアセチル誘導体化物のDSC測定やVCDスペクトル測定を行い、熱的安定性や光学特性を調査した。
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