2022 Fiscal Year Annual Research Report
PIC simulation of lower hybrid wave under inhomogeneous magnetic field: energetic-ion injection model
Project/Area Number |
22J15207
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
小谷 翼 京都大学, 理学研究科, 助教
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 低域混成波不安定性 / 低域混成波高調波 / 高速イオン / 電磁粒子シミュレーション / 非線形波動間結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
速度空間で不安定な分布を持つ高速イオンによって励起される低域混成波は、宇宙プラズマや核融合プラズマなど、さまざまなプラズマ環境で観測される。低域混成波はイオンと電子の両方を加速させることができるため、高速イオンが駆動する低域混成波不安定性の非線形発展を調べることは重要な物理課題である。 本年度は、一様磁場中の低域混成波不安定性に関する一次元および二次元電磁粒子シミュレーションを実施した。二次元シミュレーションを行っていく中で、低域混成波の高調波構造に関する興味深い発見をしたため、それについて詳細な解析を一次元電磁粒子シミュレーションを用いて行った。 低域混成波の高調波は、低域混成波の整数倍の周波数をもつ波動であり、近年地球磁気圏の極域や尾部で報告されている。最も単純な冷たいプラズマ近似では、低域混成波の周波数を超える波動は存在できず、その励起機構は十分に理解されていなかった。そこで、極域を想定したパラメーターを用いて電磁粒子シミュレーションを行った結果、低域混成波の高調波が極域に降下する高速イオンによって励起されることを示した。さらに高調波が強く励起されるほど背景に存在するイオンが強く加速されることを突き止め、高調波がイオン加速を強化する可能性を提示した。 また、高調波の詳細な励起機構を調べるために、低域混成波不安定性の非線形発展を入念に調べた。波動間の非線形な結合度合いを調べるバイコヒーレンス解析を行ったところ、高速イオンが励起した低域混成波が非線形波動間結合することによって高調波が励起されることを明らかにした。さらに、高速イオンを初期にのみ配置する初期値問題では、高調波はすぐに減衰するが、高速イオンを注入し続けることによって、大振幅を維持できることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度は、高速イオンが駆動する低域混成波不安定性の非線形発展を、一様磁場中の二次元シミュレーションで調べる予定であった。実際に二次元計算を行い初期解析を行なっていたが、その際低域混成波の高調波構造が見つかったため、高調波を詳細に調べる一次元シミュレーションを中心に研究を進めた。 一次元シミュレーションを行った結果、低域混成波の高調波が極域に降下してくる高速イオンによって駆動されることが明らかにした。この結果をまとめ、国際学術誌であるGeophysical Research Letters誌で発表した。また、高調波が、高速イオンが駆動した低域混成波が非線形波動間結合することによって励起されることを明らかにした。この結果をまとめて、国際学術誌であるPhysical Review E誌に投稿し、現在査読中である。これらの結果に基づいた国内・国際学会における発表で、優秀発表賞を3件受賞しているなど、高い評価を受けている。一方で、二次元シミュレーションについては当初の計画より遅れており、全体として本研究の進捗は「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、高速イオンが駆動する低域混成波不安定性の非線形発展について、シミュレーションを行っていく。特に低域混成波の高調波に注目し、一様磁場中の二次元シミュレーションを行うとともに、励起条件に関するパラメーター解析を行う。本年度では、限られたパラメーターでしか高調波の性質を調べることができなかったが、磁場・密度・高速イオンの速度を変えた場合に高調波の励起がどのように変化するかを調べていく。 高調波が実際に観測された地球磁気圏極域では、磁場の非一様性が重要となる。一様磁場中でのシミュレーションを土台として、極域のような非一様磁場中での低域混成波不安定性の非線形発展の解明につなげていく。
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