2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a computable general equilibrium model considering innovative carbon dioxide reduction technologies and the application of climate change policy assessment
Project/Area Number |
22J15734
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西浦 理 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 気候変動緩和策 / パリ協定 / 脱炭素社会 / 二酸化炭素直接回収 / 応用一般均衡モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
脱炭素社会の実現のため、炭素直接回収、炭素利用や水素利用といった、新しい二酸化炭素排出削減技術が注目を集めている。しかし、従来の排出削減シナリオ研究の多くは、これらの新しい技術を考慮していない。本研究課題は、現在商業利用されていない排出削減技術を包括的に考慮できる統合評価モデルを新しく開発し、長期的な脱炭素社会への道筋を示す。これにより、従来の研究で想定していた排出削減策のみを考慮した場合に見られた困難性がどの程度解消するのか、また新たに浮上しうる問題は何かといったことを明らかにすることを目的としている。 本研究課題では、応用一般均衡モデルをベースとした統合評価モデルにおいて、複雑な炭素および水素のフローを表現することで新しい二酸化炭素排出削減技術を表現する。令和4年度においては、脱炭素社会の達成において重要な役割を果たすことが期待される炭素直接回収技術のモデル化を完了させた。この研究で開発したモデルは非常に多くの変数を含む均衡式体系をもつ。この均衡式体系を解くために計算機を導入し、数理最適化のためのモデリングシステムであるGAMSを用いて均衡解を計算した。令和4年度に行った研究により、1.5度目標を達成する際に炭素直接回収技術が社会経済に与える影響を明らかにした。具体的な内容については次のとおりである。 1. 炭素直接回収技術の利用により、二酸化炭素排出削減に伴うGDP損失を大幅に抑制する一方で、家計消費の改善効果は限定的である。 2. 炭素直接回収技術はバイオマスの需要を抑制し、間接的に食料価格を低下させる。 3. 炭素直接回収技術は液体燃料を利用する部門(輸送や製造業)における排出削減を代替する。 この研究成果をまとめたものが土木学会論文集に掲載され、この研究成果をもとに国際学会においてポスター発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は研究計画に則り、応用一般均衡モデルをベースとした統合評価モデルにおいて、炭素直接回収技術のモデル化を完了させた。このモデルを用いて、脱炭素社会の実現のため炭素直接回収技術が果たす役割を明らかにした。モデル化の際には、次年度にモデル化を行う他の技術も見据え、部門間の炭素フローを明示的に扱うようにモデルを改良しており、新しい排出削減技術を包括的に考慮できる統合評価モデルの開発という目的に向けて順調に計画を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、水素フローのモデル化に取り組む。水素エネルギーキャリアには圧縮水素や液化水素、有機ハイドライト、アンモニア、合成燃料といった多様な形態が存在する。それぞれの製造コストや利用可能な部門についてのデータを収集し排出削減シナリオでの水素の利用をモデル化する。特に炭素直接回収やバイオマス燃焼時の二酸化炭素と水素を反応させて製造される合成燃料のモデル化には、複雑な水素および炭素のフローをモデル内で表現する必要がある。水素及び炭素フローのモデル化が完了した後は、新しい排出削減技術を包括的に考慮したうえで多様な社会経済状況のもとにおいて1.5度目標を達成する排出削減シナリオを推計する。
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Research Products
(9 results)