2023 Fiscal Year Annual Research Report
大腸がんにおける脂肪酸受容体を介した病態進展の解析
Project/Area Number |
22KJ1916
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山口 一樹 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | Ferroptosis / 脂肪酸 / 長鎖脂肪酸 / 脂肪酸受容体 / 大腸がん / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
野生型マウスを用いた長期高脂肪食負荷検体群および通常食検体群における糞便中および血中の中・長鎖脂肪酸をLC-MS/MSを用いた質量分析法によって評価した。結果、長期高脂肪食負荷によりリノール酸 (PA) ・オレイン酸 (OA) ・アラキドン酸 (AA) の生体内濃度が減少する傾向、パルミチン酸 (PA) ・γ-リノレン酸 (γ-LA) の生体内濃度は変化がない傾向、ステアリン酸 (SA) の生体内濃度が増加する傾向の結果が得られた。 次に、ヒト大腸がん由来DLD-1細胞あるいはHCT-116細胞を用いて、長鎖脂肪酸の刺激による細胞生存性の制御への検討を行った。 結果、鉄依存性の細胞死であるFerroptosisの誘導に、上記の脂肪酸が影響することが明らかとなった。多くのがん細胞は、アミノ酸の一種であるシスチンの枯渇によりFerroptosisが誘導されることが知られている。その一方で、DLD-1細胞あるいはHCT-116細胞はシスチン枯渇でもFerroptosisが生じないことを見出した。しかしながら、シスチン枯渇条件下で、飽和脂肪酸であるPA、及び多価不飽和脂肪酸であるLA・AA・γ-LAはFerroptosisを誘導、飽和脂肪酸であるSAの刺激ではFerroptosisは誘導されず、一価不飽和脂肪酸であるOAはPAやLAで誘導されたFerroptosisを抑制することが明らかとなった。 さらにこの結果について、DLD-1細胞およびHCT-116細胞は、上記の長鎖脂肪酸をリガンドとするGPR40およびGPR120の発現量が少ないことを確認した。そのため、大腸がん細胞の生存性制御においては脂肪酸受容体に関与なく、上記の脂肪酸が寄与している可能性が示唆された。
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