2022 Fiscal Year Annual Research Report
Research on design-driven consensus-building methodologies in street redesigning
Project/Area Number |
22J16010
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉野 和泰 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 道路空間再編 / 歩行者空間整備 / 合意形成 / 交通計画 / シェアードスペース / デザインドリブン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,道路空間再編の取り組みが先進的な海外諸都市の事例を対象に,計画・設計とその協議・対話のプロセスの分析を行う.空間の質や賑わいなど定性的な評価指標に纏わる議論を起点としながら,交通の利便性や安全性をも包含し,社会的合意形成を導くための方法論を明らかにすることを目的とする. 2022年度は,以下の事例について調査・分析を行った. A.ウィーン・マリアヒルファー通りの事例では,欧州最大規模のシェアードスペース(歩車共存道路)の導入にあたり,特に歩車道の境界部分の設計に関する協議・調整が,合意形成を図るうえで重要な課題となった.この際,市が比較的長期にわたる交通・利活用社会実験を実施したことで,市民による目標空間像の形成・成熟とそれに伴う市民の意識変容が促され,交通計画の修正のみでは解決困難であった交通安全上の課題に対して空間設計の工夫で対応する高次的な課題解決が導かれたことを明らかにした.本研究成果は,土木学会論文集D4(土木計画学:政策と実践)で発表予定である(採択,2023年4月). B.ブリュッセル・アンスパッハ通りの事例では,中心市街地の幹線道路を歩行者専用道路化するにあたり,車両でのアクセスを必要とする沿道商業者や駐車場利用者との合意形成が課題となり,複数回にわたって計画修正と設計変更が行われた.この際,市民が独自に主催した歩行者天国イベントやデザインアイデアコンペでの利活用イメージをもとに,市民と行政,設計者らが協働で目指すべき空間の目標像を形成し,交通・利活用社会実験を通じてその実現可能性を検証した.目標空間像との整合性を評価指標として交通計画の修正を進めたことで,屋外での多様なアクティビティを受容する広場空間を実現したことを明らかにした.本研究成果は,2023年度発表予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度研究対象としていた事例については、現地調査および行政担当者等へのヒアリングを実施し、分析に必要なデータの収集を完了した。また、2023年度に実施予定の複数の研究対象地においても文献資料を中心にデータ収集を行った。パリ市の研究機関において一定期間共同研究を行い、現地専門家との議論を通じて、当初の研究の枠組みを拡張する指針も得ることができた。 一方で、収集したデータの分析とデータベースの構築に期間を要したため、2022年度中に発表予定だった一部研究成果については2023年度に繰り越して発表することとした。研究計画全体の遂行に大きな影響はないと考えられるため、区分:(3)やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、当初の研究計画に則って海外の事例調査を進める。 具体的に2023年度は、フランス(地方都市)・スイス・ドイツ・オランダを中心に、各都市の道路空間再編プロジェクトの現地調査と行政担当者などへのヒアリング調査を行う。また並行して、これまで収集した研究資料と分析結果をもとにデータベースを作成し、研究成果を体系的に整理する。実現した空間のタイプ(歩行者専用道路、歩車共存道路、広場など)とそれに応じた計画調整・合意形成の手順を構造化する。特に合意形成の各段階における定性的な議論(デザイン)の役割に着目し、そのプロセスの評価の枠組みを整理する。最終的に、デザインドリブン型の合意形成の方法論として、博士論文を取りまとめる。
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