2022 Fiscal Year Annual Research Report
オプシン類は如何にしてレチナール受容体から光受容体となったのか
Project/Area Number |
22J20019
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
藤藪 千尋 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | オプシン / 光受容タンパク質 / レチナール / GPCR / ロドプシン / 分子進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物の光センサータンパク質として機能するオプシン類は、光受容に特化したGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、リガンドとして11-cis型レチナールを共有結合し、光によりこれをall-trans型に変換することで活性化する。本研究では、オプシン類がall-trans型レチナールよりも11-cis型レチナールへの親和性を高めることで光による活性制御能を獲得し、光受容体として最適化されてきた過程の解明を目指す。 本年度は、申請者が先行研究(Fujiyabu et al., 2022)にてOpn5mサブグループのレチナール結合特性の制御に関わる残基として見出した188番目のアミノ酸を足掛かりとして、以下の研究を行った。 ① Opn5グループの配列比較によるレチナール結合特性の制御に関わるアミノ酸残基候補の検討 推定される先祖型オプシンの性質に似た、光ではなくall-trans型レチナールとの結合により活性化するOpn5L1に対して188番目のアミノ酸に変異を導入すると、all-trans型レチナールへの親和性の低下と光応答特性の変化が確認された。また、Opn5mにおいてレチナール結合特性の制御に関わる新たな残基候補を見出すことができた。今後はこの残基についての変異体解析も並行して進めていく予定である。 ② 188番目にスレオニンまたはセリン残基を持つOpn5グループ以外のオプシンのレチナール結合特性の制御メカニズムの解明 Opn5m/L2サブグループと同様に188番目にスレオニンまたはセリン残基を持つ複数のオプシンに対してT/S188変異体を作成し、レチナール結合特性を調べるという変異体解析を進めている。現在までに解析した複数グループのオプシンにおいて、変異導入によりレチナール異性体の結合選択性が変化するという結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究実施計画通り、Opn5グループのレチナール結合特性の制御に関わる残基候補の検討と、188番目にスレオニンまたはセリンを持つOpn5グループ以外の複数のオプシンのレチナール結合特性の制御メカニズムの解析を行った。 Opn5L1の変異体解析では、188番目のアミノ酸残基のみの変異では11-cis型レチナールへの親和性向上は十分とは言えないが、all-trans型レチナールへの親和性は低下するという結果が得られた。したがって188番目のアミノ酸残基は、Opn5L1サブグループにおいてもレチナールの結合選択性の制御に関わる残基であると考えられる。また、188番目のアミノ酸以外の新たな候補残基を見出したことで、今後さらにOpn5グループの分子特性の制御メカニズムを詳細に調べることができる。 188番目のアミノ酸残基によるレチナール結合特性の制御の普遍性の検証は着実に進んでおり、今後さらに検証を進めていくことで、Thr188の獲得が光受容体としての分子進化の上で重要な役割を果たした可能性を議論できると期待される。したがって本年度の研究では、当初の予定に相当する成果を得られたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きOpn5以外の複数のオプシングループにおいて、188番目のアミノ酸残基のレチナール結合特性への寄与について検証を進める。特に、all-trans型レチナールへの親和性を失って11-cis型レチナールのみを結合する、光活性化に極端に特化したオプシンである脊椎動物の視覚ロドプシンに変異を導入することによって、all-trans型レチナールへの親和性を持たせることを試みる。この解析結果を踏まえ、令和6年度に実施予定のレチナール結合選択性の生理的意義の検証方法を検討する。また、オプシンの分子特性における188番目のアミノ酸残基及び他の候補残基の機能のさらなる理解を目指す。
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