2023 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の分化における一次繊毛の機能に着目した繊毛病の分子基盤の解明
Project/Area Number |
22KJ1931
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 大和 京都大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / ヘッジホッグシグナリング / 骨芽細胞 / 間葉系幹細胞 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、間葉系幹細胞株C3H10T1/2の骨芽細胞分化を誘導後、分化能を評価する実験系を確立した。具体的には、ヘッジホッグ(Hh)シグナル活性化剤のSmoothened agonistを培地に添加してC3H10T1/2細胞を培養後、骨芽細胞分化マーカーであるALPの発現をRT-qPCRおよびALP染色で評価する系を立ち上げた。 また、この系を確立する過程で、Hhシグナルに関与する転写因子であるGli2、ならびに繊毛局在GPCRであるGPR161が骨芽細胞への分化を制御する可能性を見出した。C3H10T1/2細胞を用いてGli2およびGPR161のノックアウト(KO)細胞を作製し、骨芽細胞への分化能を調べたところ、Gli2-KO細胞では骨芽細胞への分化が抑制され、GPR161-KO細胞では骨芽細胞への分化が亢進した。この結果から、Gli2は骨芽細胞への分化を促進し、GPR161は骨芽細胞への分化を抑制することが細胞レベルで明らかになった。また、GPR161-KO細胞ではGli2の発現が上昇していたことから、GPR161(転写抑制→)Gli2(転写活性化→)ALPという転写調節経路が存在する可能性も示唆された。 以上の結果を踏まえて、GPR161に関連する繊毛病に着目して研究を展開した。GPR161は定常状態で繊毛に局在するが、Hhシグナルが活性化すると繊毛外へ排出される。この排出が阻害されると、繊毛病発症の原因となることが先行研究で示されている。特に、ダイニン-2のサブユニットであるDYNC2LI1の変異は、GPR161の繊毛外への排出を阻害し、骨格系繊毛病を引き起こす。このことに着目し、C3H10T1/2細胞を用いてDYNC2LI1-KO細胞を樹立した。DYNC2LI1-KO細胞の分化能をALP染色とRT-qPCRで調べたところ、骨芽細胞への分化が抑制されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、CRISPR/Cas9法とレンチウイルスベクターを用いて、間葉系幹細胞株C3H10T1/2細胞で繊毛病患者の遺伝子型を模倣する実験系を確立した。さらに、C3H10T1/2細胞を骨芽細胞に分化誘導後、分化能を評価する実験系も立ち上げることができた。以上の成果により、繊毛病の原因変異が骨芽細胞への分化に与える影響を調べるための研究基盤を整備できたと考える。また、DYNC2LI1の変異に起因する繊毛病患者の遺伝子型を模倣したC3H10T1/2細胞も作製済みであり、本年度確立した評価系を用いて骨芽細胞への分化能を測定することで本研究の目標を達成できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、DYNC2LI1-KO細胞に骨格系繊毛病の原因となるDYNC2LI1変異体を発現させたレスキュー細胞を作製している。今後は、このレスキュー細胞の分化能を、本年度確立したRT-qPCRとALP染色によって評価し、DYNC2LI1の変異によるGPR161の排出阻害が骨芽細胞分化に与える影響を細胞レベルで検証する予定である。
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