2022 Fiscal Year Annual Research Report
Prediction of Phase Transition Behavior by Machine Learning to Interpret Molecular Arrangement and Application to Photofunctional Liquid Crystals
Project/Area Number |
22J21715
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
須賀 健介 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 機械学習 / 液晶 / 分類問題 / in silicoライブラリ / 蛍光分子 / V字型集積構造 / MD計算 / 力場 |
Outline of Annual Research Achievements |
分子の化学構造のみから分子集合体のバルク物性を予測することは、狙いの材料を開発する速度やコストを下げる点から重要である。このようなトランススケール科学の発展を目指し、当該年度は以下の3つの研究を行った。 1.液晶データセット「LiqCryst」に含まれる化合物データを拡張し、2億件以上の液晶様構造を含むin silico液晶化合物ライブラリを構築した。ルールベース方式により、合成容易性の高い液晶様構造を大量生成した。生成した構造が「LiqCryst」に含まれているか、一般化合物データセット「ZINC15」に含まれているかを判断する分類評価を機械学習により行ったところ、in silicoライブラリ中の97%の構造が「LiqCryst」中の構造に類似していると評価された。このin silicoライブラリを用いることで、液晶の化合物空間上での教師なし学習など機械学習の幅を広げることができる。 2.相転移エンタルピーの大きい分子群として期待される羽ばたく分子FLAPの集積挙動や光構造変化挙動を電子状態の調整により制御した。導入する置換基の種類を変えることで、結晶パッキング構造が変わること、また溶液状態において光構造変化が起こるか否かが変わることを明らかにした。この分子群は最終到達目標である「狙った相転移挙動を示す機能性液晶材料」を開発する際に基本骨格として用いられる可能性を秘めている。 3.MD計算によりFLAP分子から記述子を生成する際に必要な力場を作成した。一般的な力場であるGAFFではFLAP分子のCOT二面角を過大評価する傾向があり、正確なパッキング予測や配座変化の活性化障壁の評価に問題があった。今回作成した力場により、FLAP分子の最安定COT二面角や配座変化の活性化障壁を量子化学計算の結果と同程度にしたMD計算が可能になった。これは妥当な記述子生成へと繋がることが期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績にも示したように、当該年度はin silicoライブラリの構築、機能性液晶材料の基本骨格の探索、記述子生成に向けた力場の作成といった、機械学習、有機合成、計算化学の3つの観点からの進展があった。特にin silicoライブラリが構築できたことで、当初想定していた「分子構造→相転移挙動」の順問題を超えて、「相転移挙動→分子構造」の逆問題に取り組む準備ができた。 また、置換基の変更による電子状態の調整により結晶のパッキング構造が変化したという結果から、液晶分子の相転移挙動を予測する際には記述子として電子的な効果を入れなければならないという知見が得られた。このように用いる記述子の厳選も進んでおり、液晶の相転移挙動を予測する機械学習モデルの構築にも期待が寄せられる結果である。 さらに、FLAP分子に適した力場を構築できたという点からは、これまでシミュレーションできなかったFLAP分子に特有のV字型集積構造の形成過程の再現につなげることができることが期待できる。例えば、研究実績2で合成したFLAP分子において結晶パッキング構造が異なる理由の説明ができる可能性をもつ。これは如何にして分子が集合してパッキング構造が形成されるかを考察する一助となり、液晶化合物の相転移挙動の予測におけるメソゲンの集まり方を数値化する記述子の開発に繋げられると期待している。 以上の点から、初年度として目標である「LiqCryst」データセットの整備や記述子の選別を超えた成果が得られており、当初の研究計画以上に進展したと評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、(1)液晶化合物の相転移挙動が多様できる説明ができる記述子を生成する。(2)生成した記述子を用いて構築したin silicoライブラリ中の化合物をn次元ベクトルに数値化し、液晶の化合物空間である潜在空間を構築する。(3)潜在空間から相転移温度、相転移エンタルピーを出力できる機械学習モデルを構築する。(4)潜在空間を探索するプログラムを作成し、目的とする相転移温度、相転移エンタルピーを発現する潜在空間上の点を見つけ出す。(5)その点に対応する化合物を2億件以上の化合物が含まれるin silicoライブラリから逆算して導き出し、実際に合成して狙いの相転移挙動を示すかを確かめる。(6)メソゲン骨格を光機能性π共役骨格に固定し、その制約のもとで狙いの相転移挙動を示す化合物を探索する。 以上の6点を順次進める予定である。
|