2022 Fiscal Year Annual Research Report
新旧ジェンダー観の対立構造に関する文化社会学的研究―近現代歌壇を事例として―
Project/Area Number |
22J22188
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松田 康介 京都大学, 教育学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ジェンダー / 短歌 / 性差 / 言語 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題に関連する先行研究の整理・検討を行い、取り組むべき問いがより明確になった。短歌という文学領域をジェンダーの視点から観察することの意義には、研究開始時想定していたものとは異なる側面もあった。伝統的価値観とそれに対する新しい(若い)価値観という対立構造だけではなく、ひとかたまりの言語をめぐるコミュニケーションを通じたジェンダー構築のあり方も問題関心の背景として取り入れていく。また、作者の性別を含めた属性の存在が短歌解釈において重要となる起源あるいは「理由」そのものではなく、属性を利用した解釈の過程に着目した分析の必要性を発見することができた。 研究遂行のために必要な資料収集・ネットワーク拡大に努めた。卒業論文・修士論文の執筆時点で設定していた分析対象からさらに視野を広げ、文献資料を大学図書館および不足分に関して国立国会図書館で収集し、通時的分析を進めている。短歌解釈が実際にその場でどのように行われているかが重要である、という研究課題の再位置づけを通して得られた知見を意識しつつ分析を行っている。短歌作品の講評、その中でもとくに匿名作品を評したものを調査するため新人賞システムの審査過程が観察できる雑誌記事資料を収集した。ネットワーク拡大については、短歌実作者である歌人・また本研究課題がベースとしている文化社会学・芸術社会学を専門とする研究者、それぞれのコミュニティに入り継続的な交流を開始した。そこでは、研究につながる情報提供を受けている。今までに文献資料を通して確認してきたような作者属性を利用した短歌解釈が、現在どのように実践されまた当事者がその実践を「解釈」しているのかを、今後インタビュー調査等を通して分析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
【研究実績の概要】に示した研究活動に取り組み、研究枠組の再設定を行うことができた。しかし、全体としては資料の分析が遅れているので、論文や研究報告の形で成果を公表することができなかった。積極的な研究活動を行えなかった。分析の遅れは心身の不調、また物理的な移動を伴う調査が困難であったことに原因があり、雑誌記事や書籍などの資料収集は継続して進めていたため2023年度以降に後れをカバーできる見込みがある。
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Strategy for Future Research Activity |
先行研究・文献資料の調査を進めるとともに、インタビュー調査を行っていく。インタビュー調査の目的は、これまでに明らかとなった短歌解釈の実践図式をより実際的に分析することにある。また、短歌解釈だけでなく短歌創作に投入されるジェンダー観を捉えるための聞き取りも進めていきたいと考えている。 ひとまずは雑誌記事の調査を継続して進め、その成果は2023年度夏に予定している学会発表やそれ以降の論文投稿で公表する。
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