2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J22398
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青山 有美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | セレノプロテイン / 急性骨髄性白血病 / フェロトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
セレノシステインtRNA遺伝子(Trsp遺伝子)の欠失によるセレノプロテイン合成破綻モデルを用いて、正常造血におけるセレノプロテイン群による抗酸化機能の役割、活性酸素蓄積と血球分化について評価を行った。造血細胞特異的Trsp欠失(KO)マウスは顕著な脾腫を伴う大球性貧血やBリンパ球の分化障害を示した他、長期造血幹細胞(LT-HSC)の細胞周期亢進による短期造血幹細胞(ST-HSC)の増加を示した。さらにTrsp KOマウス由来の骨髄細胞と野生型細胞を混合した競合移植実験ではKOマウス由来のキメリズムが低下し、セレノプロテインがHSC自律的な機能維持に寄与することを明らかとした。さらにTrsp KOマウスのHSCはROSの蓄積を伴う細胞死を示し、抗酸化剤であるビタミンEや低酸素培養により部分的に回避された。さらにマウス骨髄由来の造血幹前駆細胞を用いたRNA-seqを実施したところ、抗酸化マスター転写因子であるNrf2標的遺伝子群の発現上昇が認められた。これは、セレノプロテイン欠失による活性酸素の蓄積がNrf2活性化を引き起こしていることが示唆された。また、Trsp KOマウスへのビタミンE欠乏食の投与は、活性酸素の蓄積を伴ってBリンパ球の分化障害を加速させた。以上の結果から、セレノプロテイン群はその抗酸化能を介して造血幹細胞維持、赤血球系、Bリンパ球の分化制御を担うことを明らかとした。腫瘍性造血について、Cas9発現AML細胞株にsgTrspを導入したところ、競合的培養条件下において経時的に減少し、セレノプロテインはAML細胞株の生存・増殖に必要不可欠であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、造血細胞特異的Trsp欠失(KO)マウスを用いて正常造血におけるセレノプロテインの役割について評価を行い、細胞株を用いて腫瘍性造血におけるセレノプロテインの役割を評価することができており、おおむね順調に進捗していると評価している。計画の変更点としては、過酸化脂質を評価するBODIPYを用いた解析で造血細胞特異的Trsp KOマウスでは過酸化脂質の蓄積が明らかではなかったため、抗脂質過酸化作用のあるビタミンE欠乏飼料の投与を行った。また、Mx1Cre: Trspflox/flox造血幹細胞にMLL-AF9を発現させた連続移植可能な白血病モデルを作成し後天的かつ時間依存的にTrsp欠失を誘導することでAMLにおけるセレノプロテイン合成系の役割の評価系を確立する方針であったが、Trsp欠失が期待通り得られなかったためROSA26CreERT2: Trspflox/flox造血幹細胞にMLL-AF9を発現させた連続移植可能な白血病モデルを作成に切り替え実験を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍性造血について、sgTrspを導入したCas9発現AML細胞株のROSの蓄積グルタチオンレベルを測定するとともにや細胞死、細胞周期の評価を行う。さらにフェロトーシス阻害剤を用いてTrsp欠失細胞の細胞死が回避されるか評価を行う。ROSA26CreERT2: Trspflox/flox造血幹細胞にMLL-AF9を発現させた連続移植可能な白血病モデルを作成し、後天的かつ時間依存的にTrsp欠失を誘導することでAMLにおけるセレノプロテイン合成系の役割の評価系を確立する。さらに白血病マウスモデルに抗脂質過酸化作用のあるビタミンEを欠乏させた飼料を投与しフェロトーシス感受性や生存率の評価を行う。また、全セレノプロテインの阻害は正常・腫瘍性造血双方を阻害するため、治療応用に発展させるためにセレノプロテインとその合成系遺伝子のカスタムsgRNAライブラリーを作成し、CRISPRスクリーニングにより腫瘍性造血と正常造血において重要となるセレノプロテインの違いに着目し治療標的遺伝子を検索する。 さらに正常造血においてTrsp KOマウスのBリンパ球の分化障害についてメカニズムを調べるためにBリンパ球におけるセレノプロテインの発現レベルやその活性の評価を行う。
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