2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ1980
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
青山 有美 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | フェロトーシス / セレノプロテイン / 急性骨髄性白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
正常造血におけるセレノプロテインの役割について明らかにするために、前年度に引き続き、セレノシステインtRNA遺伝子(Trsp遺伝子)の欠失によるセレノプロテイン合成破綻マウスモデル(Trsp KOマウス)を用いてBリンパ球の分化障害について解析を進めた。LSKからBリンパ球への分化実験においてもTrsp KO細胞ではBリンパ球の分化障害がみられた。Trsp KOマウスのpre-B細胞では免疫グロブリン遺伝子再構成の低下がみられた。またTrsp KOマウスのpre-B細胞ではBリンパ球の分化に関連した遺伝子のRNA発現の低下がみられた。Trsp KOマウスのBリンパ球減少は加齢によって過酸化脂質の蓄積を伴い加速した。さらに、生体内フェロトーシス阻害物質であるビタミンE過剰飼料の投与によりBリンパ球減少は部分的に改善した。セレノプロテインの1つであるGPX4はフェロトーシス制御因子であるが、Gpx4欠失によって同様のBリンパ球減少は生じないため、GPX4以外のセレノプロテインによるフェロトーシス制御機構が存在する可能性が示唆された。 腫瘍性造血について、ROSA26CreERT2: Trspflox/flox造血幹細胞にMLL-AF9を発現させた連続移植可能な白血病モデルを作成し、移植後にタモキシフェン投与によって白血病細胞のTrspを欠失させたところ、白血病細胞の減少と生存期間の延長を認めた。この結果からセレノプロテインが白血病の進展に寄与することが明らかとなった。全セレノプロテインの阻害は正常・腫瘍性造血双方を阻害するため、治療標的となるセレノプロテインの検索目的にセレノプロテインとその合成系遺伝子のカスタムsgRNAライブラリーを作成し白血病細胞株でCRISPRスクリーニングを行った。 本研究について、2023年10月に第85回日本血液学会で口演発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
造血細胞特異的Trsp欠失(KO)マウスを用いて正常造血におけるセレノプロテインの役割について評価を行い特徴的な表現型であるBリンパ球の成熟障害について詳細な解析を行った。さらにマウスモデルを作成し腫瘍性造血におけるセレノプロテインの役割を評価することができており、おおむね順調に進捗していると評価している。 計画の変更点としては、既報の再解析により加齢によりセレノプロテインとその合成系遺伝子の発現が低下することを見出したため、加齢Trsp KOマウスの解析を行った。Trsp KOマウスのBリンパ球減少が加齢によって進行することを明らかにした。また、昨年度のビタミンE欠乏飼料によりTrsp KOマウスのBリンパ球減少が過酸化脂質の蓄積を伴い加速した結果を受けて、ビタミンE過剰飼料がTrsp KOマウスの表現型を改善するのではないかと仮説を立て、ビタミンE過剰飼料投与実験を行った。これらの実験からセレノプロテイン合成破綻の代償機構が加齢により低下すること、ビタミンEがセレノプロテイン合成破綻時に重要な役割を果たしている可能性が明らかとなった。 腫瘍性造血については全セレノプロテインの役割から、それぞれのセレノプロテインの機能を明らかにするという、より発展的な課題をCRISPRスクリーニングを用いて明らかにしようとしており、実際に白血病細胞株で標的の絞り込みを行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
正常造血におけるセレノプロテインの役割について、上記結果を昨年度の結果に追加した上で、原著論文を執筆中であり、信頼性の高いジャーナルへの投稿を行う方針である。 さらに、個々のセレノプロテインへの依存性が分化段階によって異なる可能性を示唆する結果を得ており、CRISPRスクリーニングやそれぞれのセレノプロテイン阻害剤を用いて、分化段階ごとに重要となるセレノプロテインの特定を行う。 腫瘍性造血について、Trsp KO白血病モデルマウスについて過酸化脂質の解析やビタミンE欠乏飼料、ビタミンE過剰飼料投与実験を行うとともに、CRISPRスクリーニングで特定したセレノプロテインについて阻害剤などを用いて治療効果を検討する方針である。
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Causes of Carryover |
試薬の値上がりに伴い、当初の購入計画では不足となるので今年度購入予定の試薬の購入を一部延期したため次年度使用額が生じた。次年度助成金と合わせて購入を延期していた試薬を購入予定である。
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