2022 Fiscal Year Annual Research Report
結晶性高イオン伝導体の共通構造の解明に基づく新規リチウムイオン伝導体の創製
Project/Area Number |
22J22444
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成瀬 卓弥 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 固体電解質 / 第一原理計算 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第一原理計算と機械学習技術を組み合わせ、高イオン伝導体に共通する構造的特徴を解明し、固体電解質材料の新たな開発指針を構築することを目的とする。 1年目となる2022年度は、イオン伝導種の配位環境とイオン伝導性との関係に着目し、局所配位環境を特徴量化する技術開発を中心に取り組んだ。局所配位環境の特徴量化は、中心イオンの近接サイト探索と配位環境の数値化という2つの基本ステップから構成される。近接サイト探索には、最近接原子間距離に基づく最小距離近傍探索法を採用し、配位環境の数値化には、四面体など配位多面体パターンの角度情報を元にした局所構造オーダーパラメータを採用した。これにより、全37種類の基本配位多面体パターンについて局所構造オーダーパラメータを計算し、これらを1次元ベクトル化することで特徴量ベクトルとした。更に、比較したい2つの構造に対し、特徴量ベクトルのコサイン類似度から構造間の類似性を判定する手法も開発した。 テストケースとして、特定のハロゲン系Li+イオン伝導体(Li3YX6, X=Cl,Br)について、Li+周りの配位環境とイオン伝導性との関係を調査した。その結果、Li+占有アニオン八面体と移動先サイトのアニオン四面体が面共有しており、これら多面体の体積増加に伴いイオン伝導度が向上することを確認した。このように、結晶構造における局所配位環境とイオン伝導性との相関が示唆されたため、多様なイオン伝導体に対する包括的な解析を次年度以降に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、高イオン伝導体に共通した構造的特徴の解明による新たな材料設計指針の提案という挑戦的な研究である。本研究では現在までに、結晶構造中における特定サイト周りの配位環境を数値化および特徴量化する技術開発が完了している。また、本手法を既報のハロゲン系高Li+伝導体に適応し、Li+サイト周りの配位環境を調査することで、配位多面体の連結方法とその体積がイオン伝導度と相関を示すことを発見している。このように、必要な技術開発のみならず新規高イオン伝導体の設計につながる知見の獲得も達成していることから、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、第一原理計算からイオン伝導度のデータセットを構築し、1年目に開発した構造特徴量を用いて多変量解析を実施することで、イオン伝導度と相関のある構造因子の包括的な解析に着手する。具体的には、まず、酸化物、硫化物、ハロゲン化物のリチウム含有化合物に対し、第一原理分子動力学計算から複数温度におけるイオン伝導度を算出する。この際、既知の高イオン伝導体だけでなく、低イオン伝導度が予想される物質も含め網羅的に計算を実行することで、多種多様な構造から成るデータセットを構築する。続いて、開発したプログラムより計算した局所構造オーダーパラメータを特徴量に用いて、クラスター分析や主成分分析など各種多変量解析を実施する。この際、局所構造オーダーパラメータを計算する基本配位多面体パターンの指定や、特定サイトの配位環境のみ特徴量化するなど、特徴量の改良も検討する。
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