2022 Fiscal Year Annual Research Report
台湾に移住したインドネシア華僑の自己表象実践の動態:社会統合政策の変遷の中で
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22J23122
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
柴山 元 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | インドネシア系移民 / 帰国華僑 / 『印尼僑声』 / インドネシア商店 / 台湾 / ディアスポラ |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の計画では、2022年度に入ってすぐに台湾での長期調査を実施することになっていたが、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着かなかったために、長期調査の開始を同年度の1月まで後ろ倒しすることとなった。 日本国内では、研究対象の1つであるインドネシア帰僑協会が発行する雑誌『印尼僑声』のうち、インターネット上で収集が可能な号を収集し、掲載記事をリスト化した。これにより、限定的ではあるが、同協会の活動の動向を可視化することが可能となった。 また、長期調査に先立ち、11月から12月にかけて1ヶ月間の事前調査を実施した。台湾本島に位置する台北市・新北市のほか、かつて東南アジアに渡る華僑の送り出し地であった金門島で聞き取り調査と資料収集を実施した。インドネシア帰僑協会や各地のインドネシア商店での帰僑を対象とした聞き取り調査からは、雑誌『印尼僑声』の分析だけからでは汲み取ることができない帰僑の複雑なアイデンティティの一端を記録することができた。 そして、2023年1月から台湾での長期調査を開始した。まず、インドネシア帰僑協会が所蔵する『印尼僑声』全巻をもとに掲載記事の一覧表を作成する作業に着手した。1960年代から発行されている同誌に掲載された記事を一覧することで、台湾に移動した帰僑たちがいかに外部に自己を表象してきたのかを明らかにすることが可能となる。この一方でインドネシア商店での参与観察も実施し、その顧客であり非華人の移民労働者やホスト社会の台湾人が帰僑や同商店といかなる関係を構築しているかを観察した。 そのほか、インドネシア出身の移民に関わるさまざまな団体・個人と知り合い意見交換を行ったほか、今後の調査における協力関係を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、フィールドワークを主軸とした研究方法に基づく地域研究である。そのため、現地調査の停滞は研究そのものの停滞を意味する。 本研究の実施にあたっては、上述のとおり、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着かなかったために、現地でのフィールドワークの開始を大幅に遅らせるという事態が発生した。このため、フィールドワークの開始が遅延した分、研究の進行も大幅に遅延することとなった。また、文献調査についても、日本からアクセスできる資料には限りがあったため、当初の計画より研究の進捗が大幅に遅れている。 一方で、現地での長期調査を開始して以後は、比較的スムーズに調査を進めることができている。特に聞き取り調査と参与観察については、雪だるま方式で新たな調査協力者を得ることができているために、目下順調に進めることができている。また、資料収集に関しても、資料が所蔵されている場所に順調にアクセスできたことや、新たな資料の存在がわかったことで、大きな問題なく調査を進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
台湾での長期調査は、2023年度も継続して実施する予定である。2023年度には、本年度中に行った調査で新たに調査すべき必要が認められた団体や個人、メディアを対象に参与観察と聞き取り調査を実施する。 具体的には、インドネシア系移民同士の交流を目的とする団体であるインドネシア・ディアスポラ・ネットワーク(IDN)にて、訪問面接型の聞き取り調査、参与観察および資料収集を行う。IDNのメンバーは、帰僑のほか、婚姻移民や留学生で構成されており、現在の国籍を問わずインドネシアにルーツがあることを共通項として集まっている。 今後は、IDNが主催するカルティニの日のイベントやバティックの日のイベント、インドネシア独立記念日のイベント、イムレック(インドネシア華人の旧正月)を祝うイベントの場で参与観察を実施する。特に、インドネシアを主軸として人々が集まるこれらのイベントにおいて、帰僑がいかにインドネシア的要素を扱い、いかに他のインドネシア出身の移民と交流しているかを観察する。 また、文献調査にも新たな調査対象を加える。2023年度には、これまでに考察の対象としてきた『印尼僑声』に加えて、2000年代から2010年代にかけてインドネシア華人が台湾で発行し、各地のインドネシア商店で販売されていたインドネシア語雑誌『INTAI』を分析する。同誌の掲載記事を一覧表にまとめ、発行当時のインドネシア移民社会の世相を把握するとともに、インドネシア帰僑やインドネシア華僑・華人一般に関連する記事の内容を分析する。また、同誌に掲載されているインドネシア商店の広告や紹介記事を分析し、当時の台湾都市部におけるインドネシア商店の広がりやサービス内容を調査する。加えて、この雑誌の発行者ともすでに知り合っているので、編集当時の様子について適宜聞き取り調査を実施する。
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