2022 Fiscal Year Annual Research Report
強相関電子系における非平衡現象の微視的理解および相転移・臨界現象との関係の研究
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22J23393
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
品田 晃希 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 磁気電気効果 / 軌道磁化 / 熱輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、空間反転対称性及び時間反転対称性が破れた系で特有な応答現象である磁気電気効果の研究を行った。この応答現象の研究は主にスピン磁化をメインに研究が行われてきた。しかし近年、高温超伝導体、スピン軌道モット絶縁体や捻じれグラフェンなどで議論されているループカレント秩序などの軌道磁気秩序や遷移金属カルコゲナイドなどで議論されるバレー自由度に付随する軌道磁気モーメントなどと、軌道自由度の重要性が認識されつつある。そこで、本研究では軌道磁化版の磁気電気効果の研究を行った。具体的には、有限温度や金属でも適用できる軌道磁気電気効果の量子力学的な定式化を行い、Bloch基底での表式を与えた。さらに高温超伝導体において提案されていループカレント秩序下でのモデル計算を行った。その結果Dirac点近傍で増強される振る舞いが確認された。この結果をまとめPhysical Review B誌で出版した。また日本物理学会やアメリカ物理学会において得られた結果の報告を行った。 さらに、本年度は熱勾配を外力とした軌道磁気電気効果の定式化を行った。この場合は応答係数に熱力学的軌道磁気四極子の補正が必要であることを示し、その補正によって低温で応答係数が発散せず、またMott関係式が成立するという物理的に自然な結果を得ることができた。また磁気点群に基づいて対称性による分類を行い、非線形ホール効果との類似性を指摘した。これらの結果をまとめPhysical Review B誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年注目を集める磁性秩序の一つである軌道磁気秩序は空間反転対称性及び時間反転対称性を破り、本研究ではその対称性の下で特有な応答現象である軌道磁気電気効果の量子力学的な定式化を与えた。またこの応答は本質的にはスピン自由度を必要とせず、軌道自由度のみにより発現されうる。これらの結果は新たな相転移現象とその下で特有な応答現象の間の関係性の理解を深めた点で、本研究の課題解明に向けて重要な進展だった。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた結果をさらに発展させ、磁気電気効果のより物質に即した解析や、磁気電気効果と非線形ホール効果の関係性の理解を深めていく。また磁気電気効果や非線形応答に相転移に伴う揺らぎの効果を組み込むことで、当初の目標である臨界現象との関係性の理解を深めていく。
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