2022 Fiscal Year Annual Research Report
実用藻類ツノケイソウにおける光合成能と有用物質生産能の統合的強化
Project/Area Number |
22J23453
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊沢 穣 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 光合成 / 集光タンパク質 / 珪藻 / 微細藻類 / 環境応答 / 物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光合成の最適化と異種発現による物質生産の統合を目指すものである。具体的には実用珪藻ツノケイソウにおいて、集光性色素タンパク質(FCP, Fucoxanthin Chlorophyll a/c - binding Protein)の構成を最適化し、かつ、有用物質生合成酵素の異種発現を試みる。本年度は主に前者の課題に注力した。 潜在的に余剰である可能性のあるFCP分子種のうち、ゲノム編集による遺伝子欠損変異体作成の標的として、光化学系に直接結合するFCPから2分子種、クライオ電子顕微鏡構造には認められないが高蓄積するFCPから2分子種、特定の光条件で高発現するFCPから1分子種を選択した。そして標的FCPのうち3つの遺伝子欠損変異体を作成することに成功し、その他の候補についても変異体候補株の単離と確認を進めている。すでに得られたFCP欠損変異体については、野生株と異なる光合成特性を有することを認めた。 加えて本年度は、ゲノム編集による特定のFCP欠損や様々な光条件が、光化学系超複合体の形成状態に及ぼす影響を解析するために、Clear Native (CN)-PAGEの条件検討を行なった。珪藻でこれまで利用されてきたCN-PAGEの条件ではチラコイド膜の精製及び泳動中にFCPが光化学系複合体から脱離してしまい、光化学系超複合体ごとのFCPの集合状態を分析することが困難であった。そこで他種藻類や陸上植物で近年使用されつつある界面活性剤を利用することで、CN-PAGE中にFCPが光化学系コアから脱離する問題を解決した。これによって、次年度以降のFCP分子機能解析の基盤技術を確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実用珪藻ツノケイソウにおける集光性色素タンパク質(FCP, Fucoxanthin Chlorophyll a/c - binding Protein)について、分子系統解析に加え、解像度の向上したクライオ電子顕微鏡を用いて得られた光化学系超複合体の立体構造から光化学系IIに直接結合するFCPを同定することに成功した。これらの情報を利用して、ゲノム編集によって複数のFCP欠損変異体を取得し、変異体は野生株と異なる光合成能力を有することを確認できたが、一部の標的FCPに対しては変異体の作成が遅れている。 また、多種藻類や陸上植物で近年利用されつつある新手法のCN-PAGEを利用して、珪藻においてこれまでよりも比較的簡便な光化学系とFCPの相互作用解析を可能にしたものの、これを作成したFCP変異体に適用して分析するまでに至らなかったなど、一部で計画からやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
1) ゲノム編集で作出した株の詳細な光合成能力、増殖能力を評価する。 2) 得られていない集光性色素タンパク質遺伝子欠損変異体を引き続き作成する。 3) 上記の変異株の光化学系-集光性色素タンパク質の超複合体の形成状態をCN-PAGEを用いて評価する。 4) 光合成能力に変化が見られる変異株のカロテノイド生合成系を評価する。 5) 引き続き葉緑体形質転換を試みる。
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Research Products
(8 results)