2023 Fiscal Year Research-status Report
実用藻類ツノケイソウにおける光合成能と有用物質生産能の統合的強化
Project/Area Number |
22KJ2017
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
熊沢 穣 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 光合成 / 集光タンパク質 / 珪藻 / 微細藻類 / 環境応答 / 物質生産 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、光合成の最適化と異種発現による物質生産の統合を目指すものである。具体的には実用珪藻ツノケイソウにおいて、集光性色素タンパク質(LHC及びFCP, Fucoxanthin Chlorophyll a/c - binding Protein)の中から余剰なものを推定して除去し、かつ、テルペノイド生合成酵素の異種発現を試みる。本研究は前者に注目し本年度まで進めてきた。 潜在的に余剰である可能性のあるFCP分子種のうち、3つの遺伝子欠損変異体を作成することに成功し、1遺伝子について、野生株と比較して向上した光合成能力を有することを認めた。この変異体は、強光かつ二酸化炭素添加時に光合成能力がさらに相乗的に向上することが確認され、RNA-seq解析の結果、炭酸固定に重要な二酸化炭素濃縮機構に関わる遺伝子が発現上昇していると示唆するデータを得た。さらに変異体と野生株で光合成特性に関して強光培養時の適応と時間分解蛍光による複合体内の励起エネルギー移動を比較することで、珪藻における光防御のメカニズムの一部を明らかにした。加えて、昨年度検討したClear Native (CN)-PAGEの条件を利用することで、特定のFCPの局在を明らかにすることに成功した。 さらにこれまで本研究を通じて明らかにしてきたLHCの分子系統解析を発展させ、珪藻の起源となった紅藻で、光化学系Iに結合するLHC (LHCI) のアセンブリの進化的過程を明らかにした。さらにこの内容を一般化し、紅藻及びクリプト藻で、LHCIの進化的過程を詳細に明らかにすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実用珪藻ツノケイソウにおけて、ゲノム編集によって作成したFCP変異体のなかに光合成能力が向上するものを特定し、その光合成特性を異なる光強度と二酸化炭素濃度条件下で調べ、特徴づけた。また、昨年度確立したCN-PAGEを利用してそのFCPの局在を明らかにし、分光的解析と合わせることで、分子機能の考察を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 得られていない集光性色素タンパク質遺伝子欠損変異体を引き続き作成・評価する。 2) 引き続き葉緑体形質転換を試みる。
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Causes of Carryover |
研究計画にあったRNA-seqを次年度に延期したため繰越が生じた。 次年度に研究計画に従って適切に使用する。
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Research Products
(18 results)