2022 Fiscal Year Annual Research Report
プラズマと薄膜表面形成過程の最適化による窒化ホウ素薄膜の広レンジ機能制御
Project/Area Number |
22J23802
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝本 雄也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 窒化ホウ素 / プラズマ / 真空アーク放電 / イオン衝撃 / Nラジカル / フラックス |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化ホウ素(BN)膜は内部の元素組成・結合状態によりその特性が幅広く変化する.BN膜中の元素組成・結合状態制御には,「原料(B)供給」「反応性粒子(N)生成」「基板と薄膜に対するイオン衝撃」の3要素の高度制御が不可欠である.本研究では,これら3要素を独立に制御しうる反応性プラズマ支援成膜(RePAC)法を用いたBN膜の機能設計・制御技術の確立を目指すものである.以下に研究の概要を示す. (1)RePACに搭載されたプラズマ源である真空アーク放電を解析し,陰極から放出される熱電子の陽極への輸送がカソード前面の空間負電荷により阻害される現象を確認した.この熱電子輸送阻害機構は,Nラジカル・各種イオン生成を律速するものであり,かつプラズマ生成条件に大きく依存することを明らかにした.特に,Nラジカル生成については,母ガスとなる窒素ガス割合とこの律速機構の競合により,最適なガス混合比が存在することを明らかになった.さらに,この描像に基づき,Nラジカル生成とイオン衝撃を広レンジで独立に制御する方法論を確立した. (2)(1)で明らかになった描像に基づくプラズマ源の最適化,蒸発源からの水素発生抑制を目的としたB蒸発源の最適化を施した新規チャンバーを設計した.この新規チャンバーでは,スループットや制御性の向上,磁極の変更によるプラズマの制御レンジ拡大が図られている. (3)プラズマから入射するイオンによりカソード陰極がスパッタされ,カソード構成原子(W)がBN膜に取り込まれる効果が,BN膜特性に影響を及ぼすことがわかってきた.BN膜中のW割合制御を目的とし,カソードに入射するイオンのエネルギーに関わるプラズマポテンシャルの測定,被プロセス基板へのW原子フラックスの測定を行い,プロセスパラメータとの相関を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記3要素の高度制御を目的とした放電解析は順調に進んでいる.BN膜特性解析については金属混入の効果があることが判明したため深く踏み込めなかったものの,金属混入割合の制御技術が確立されつつある.今後のBN膜特性制御への基盤が構築されたと考え,(2)おおむね順調に進展している.と自己評価した.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの蓄積されてきたプラズマやプロセスの制御技術に基づき,従来の化学量論比BN膜にとどまらず,元素組成や不純物混入割合の異なるBN膜の作製に取り組む.作成されたBN膜の特性を解析することで,BN膜の機能を幅広く制御できることを実証する. 上記の新規チャンバーを構築し,スループットや制御性の向上など当初の目的が達成されたことを確認する.また,磁極を変更しプラズマ解析を行うことで,実現しうるプラズマパラメータ範囲を幅広く探索し,旧チャンバーで実現しえなかったプロセス条件での成膜を行う.
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Research Products
(5 results)