2023 Fiscal Year Research-status Report
プラズマと薄膜表面形成過程の最適化による窒化ホウ素薄膜の広レンジ機能制御
Project/Area Number |
22KJ2022
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
朝本 雄也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | 窒化ホウ素 / 真空アーク放電 / ドーピング |
Outline of Annual Research Achievements |
窒化ホウ素(BN)は内部の元素組成・結合状態によりその特性が幅広く変化する.本研究は,我々の開発する反応性プラズマ支援成膜(RePAC)法によりBN膜特性を高度に制御した成膜技術を確立することが目的であり,本年度は不純物導入に焦点を当てた.RePAC法によるBN成膜では,ホウ素(B)は電子ビーム加熱により供給する一方,窒素ラジカルや各種イオンはタングステン(W)熱陰極を用いた真空アーク放電により供給する.W陰極へのイオン衝突によりW原子がスパッタされBN膜中に取り込まれる.このW導入制御手法とW導入効果を明らかにした.以下に詳細を記載する. [1]RePAC法におけるW導入制御手法として2通りの手法を提案した.(Ⅰ)陰極のスパッタ現象を制御し,系に供給されるWの絶対量を制御する方法.(Ⅱ)B供給量によりBN成膜レートを制御し,BN膜中のW量を相対的に制御する方法.制御手法I,IIの組み合わせにより,幅広いW割合のBN膜作製が可能となった. [2]成膜中に基板にバイアスを印加せずに作製したsp2結合BN膜を対象にW導入効果を議論した.[1]で提案した手法によりW割合を制御した.作製したBN膜の光学特性は分光エリプソメトリーにより評価した.W割合増加に伴うバンド内状態密度の増加により,消衰係数kの立ち上がりが低エネルギー側にシフトした.これは第一原理計算により求めた状態密度と合致する. [3]成膜中に基板にバイアスを印加し,sp2結合からsp3結合への相転移を伴うBN成膜を行った.陽極-陰極間電圧制御によりBN膜へのW供給量を制御した.W供給量増加に伴い,sp3結合形成に必要な基板バイアス閾値が増加した.これは,W導入がsp3形成機構を支配するパラメータの一つであることを示唆する.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の取り組みにより,昨年度問題となった金属混入現象を制御可能となり,金属不純物導入が成膜プロセスならびにBN膜特性に与える影響を明らかになった.また,第一原理計算による材料特性予測スキームを確立し,実験結果との合致を得た.実験と計算を組み合わせたプロセス最適化に向けた指針が示されたと考え,(2)おおむね順調に進展している.と自己評価した.
|
Strategy for Future Research Activity |
不純物を導入したBN膜の電気的特性・信頼性評価により,不純物導入効果をより詳細に解析する. また,これまで明らかとなったイオン衝撃による結合状態制御と不純物導入の相互作用を念頭に置いたうえで,結合状態制御と不純物導入を可能な限り独立に制御する成膜プロセスを確立し,不純物導入量とsp2/sp3結合割合のそれぞれがBN膜特性に与える影響を明らかにする.
|
Causes of Carryover |
本年度の研究を進める中で,当初購入を計画していた実験用消耗品に不要なものがあることが判明し,購入せずに研究を進めた.それらは2024年度に予定している研究計画には必要な物品であるため,次年度使用額に計上している.
|