2023 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム情報からスプライシング異常を細胞種別に予測する深層学習モデルの構築
Project/Area Number |
22KJ2023
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒澤 凌 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | RNAスプライシング / 機械学習 / バイオインフォマティクス / 深層学習 / ゲノム / 臨床遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝子変異の一部がRNAスプライシングに異常を引き起こし、遺伝性疾患のリスクや発生原因となります。これをDNA塩基配列から予測する技術が開発されていますが、従来は組織や細胞ごとのスプライシング制御機構の違いが考慮されていませんでした。本研究は、細胞種特異的スプライシングをDNA塩基配列から機械学習でパターン化し、病的スプライシング異常をより正確に予測することを目指します。2023年度の研究成果は以下の通りです。 病原性スプライシング予測モデルの臨床応用:スプライシング異常の病原性を判定するシステムPDIVASを開発し、第三者機関による比較で最高精度を達成しました。このモデルを用い、未診断の患者約200検体の解析を行い、新たなスプライシング変異を特定しました。 汎用スプライシングモデルの作成:ヒトの様々な組織のデータを用いて、汎用スプライシングモデルを構築しました。このモデルに脳・筋・血球のデータを加え、細胞種特異的なスプライシングを予測できるようにする予定です。これにより、スプライシング因子やがんが関与するスプライシングパターンの解明やスプライシング制御薬の作用パターンの解析までの展開が期待されます。スプライシング制御型アンチセンスオリゴ核酸のデザイン:福山型先天性筋ジストロフィーの病的エクソンをスキップさせる技術を報告しました。スプライシング制御因子の作用配列の予測技術を応用して、患者由来細胞でターゲット遺伝子のタンパク質発現を回復させることに成功しました。これらの研究により、スプライシングパターンの解明、新規病原性予測モデルの臨床応用、そして治療法の開発に成功しました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
提案した課題内では、新規のスプライシング予測モデルを開発するところまでをゴールとしていたが、2023年度時点で開発に加え、遺伝病患者の新規変異の同定を行うまでに至ることが出来た。また、細胞種特異的な予測モデルを作成する方策として着想した汎用スプライシングモデルは、今回のその目的のみならず、スプライシング制御塩基配列を解き明かそうとする様々な研究を達成し得るものであり、提案課題以上の発展性を見込むことが出来る研究成果を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した汎用スプライシングモデルを起点に、細胞種特異的なスプライシング現象の予測、スプライシング制御化合物の制御パターンの予測、スプライシング因子の関与するスプライシング現象の予測など、様々な予測タスクを実施し、スプライシングパターンの全容解明に資することを目指す。また、今年度の実績であるスプライシング制御型アンチセンスオリゴ核酸の開発についても、さらなるスプライシング改変効率を求め、自身のスプライシング予測技術をさらに生かした別種のテクノロジー開発を実施予定である。
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Causes of Carryover |
想定よりも解析に使用するデータ量が少なく済み、外付けハードディスクの購入が少なく済んだため。差分の106,968円は、昨今の円安に伴う国際学会の支出高分や、今後必要になる外付けハードディスクに充てる予定である。
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