2022 Fiscal Year Annual Research Report
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22J40202
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊東 さなえ 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ネパール / 南アジア / 災害 / 文化人類学 / 災害人類学 / 地震 / 復興 / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は以下の調査を行った。 【フィールド調査】夏と春にそれぞれ10日前後のフィールド調査をネパールで実施した。8月のフィールド調査はコロナウイルスの拡大以降3年ぶりであったため、3年間の変化の把握、現地のインフォーマントとの関係性の再構築、3年の間に刊行された資料の収集を主として行った。2月の調査では主にカトマンドゥ盆地内と2015年地震の最大余震の震源地に近いドラカ郡において調査(参与観察およびインタビュー)を行った。 【文献調査】国内外の災害と記憶に関する資料を購読し、研究全体の議論の精緻化を図った。また、夏のフィールド調査で入手したネパール国内で発刊された資料(文献およびパンフレット類や官報、新聞記事等)を精査した。 これらの調査の結果、ネパールでは震災の記憶は急速に日常の中に取り込まれつつあるが、一方で、特に建造物の設計や復興した街並みは人々に常に震災を思い出させ続ける機能を有していることがわかった。これはある種の震災を記憶する仕組みとも考えられるが、建造物の設計等は政府が住宅復興予算と紐づけで半ば強引に広めたものであり、人々の間での評価は分かれている。今後はこの点をさらに深め、新しい復興の街並みと震災の記憶が具体的な人々の生活の中にどのように位置づけられようとしているのかについて調査を進めていきたい。 上記の調査結果については、2月10日のヒマラヤ研究ユニット研究会にて発表したほか、Studies in Nepali History and Society誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
それぞれ短期間ではあったものの、夏、春と二度に渡り渡航することができたことで、インフォーマントとの関係回復と、新たな調査の実施のどちらも行うことができ、データも概ね満足のいく内容のものを集めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も夏および春に現地調査を実施する。また、秋に補完的な調査としてインド北東部でのフィールド調査も予定している。特に、カトマンドゥ盆地内およびドラカの調査村における復興住宅の写真撮影およびデータ収集を第一の目標とする。それにより復興住宅の特徴について多角的に把握する。また、申請者が保持している震災以前の写真や家屋に関する情報、先行研究におけるネワール家屋についての記述等との比較検討を行う。加えて、復興住宅が作り出す新しい景観について、聞き取りや参与観察を行う。 これらの成果については適宜、論文として投稿し、また、書籍出版に向けた準備を行う。
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