2020 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of V-ATPase by cryo-EM
Project/Area Number |
20J00162
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 温子 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
|
Keywords | Cryo-electron microscopy / Cryo-electron tomography / V-ATPase / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
V-ATPase (液胞型 ATPase、以下 VoV1 と記す) は細胞のほとんどの空胞系膜に存在し、ATP の加水分解のエネルギーを使いプロトンを運ぶことで、空胞系オルガネラ内部を酸性化する。VoV1 によるオルガネラ内部の酸性化は、神経伝達物質の輸送やタンパク質の分解のほか、骨の分解、がん細胞の浸潤に関与することから、その機能・構造に関する知見は疾病の理解や、創薬開発に繋がると期待されている。本研究では、VoV1 の構造を低温電子顕微鏡 (Cryo-EM) を用いた構造解析により解明することで、Cryo-EM による構造解析手法の開発に貢献するとともに、VoV1 を標的とした創薬に繋がる情報を得ることを目的とした。 研究初年度は、VoV1 の精製系の確立を中心に研究を遂行し、VoV1 の精製に必要なタンパク質の精製系を確立するなど重要な成果を得た。哺乳類細胞由来 VoV1 の大量発現系の構築を試みたところ、VoV1 複合体どころかサブ複合体さえ精製することはできなかった。得られた結果から、単独サブユニットの過剰発現系では、均一な VoV1 複合体の大量発現は見込めないと考え、VoV1 が高発現している組織から VoV1 を精製するための実験系の整備に着手した。まず、VoV1 の高発現が確認されている哺乳動物の脳組織から膜画分を調製した。並行して、VoV1 の精製に必要なタンパク質の発現系及び精製系を確立した。一方、細胞内で VoV1 がどのような構造をとり、どのような因子と相互作用し機能しているかを知るためには、細胞内で機能している VoV1 を直接観察する必要がある。VoV1 が局在する細胞内オルガネラであるシナプス小胞を対象として、トモグラフィー解析を行うための試料作製を行なった。試料のクライオ観察の結果、純度の高いシナプス小胞を確認することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度目においては、VoV1 の精製に必要なタンパク質の発現及び精製系を確立し、VoV1 の精製系を確立する目処を立てることができた。当初計画した哺乳類細胞由来 VoV1 の大量発現及び精製系の確立については、発現系の構築が困難であると判断し一旦保留としたが、先行研究で開発された手法を取り入れることで、VoV1 を精製するための新たな実験系を整備することができた。この手法により、VoV1 の精製系を確立することが出来れば、様々な細胞種から VoV1 を精製できる可能性があるため、今後の進展が期待できる。一方、シナプス小胞のトモグラフィー解析を行うための試料作製については、純度の高いシナプス小胞試料を調製することができた。Cryo-EM を用いた試料観察の結果、高純度のシナプス小胞を観察できており、傾斜画像シリーズを取得するためのクライオ試料を作製することができた。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目においては、まず VoV1 の精製系を確立し、単粒子解析を行うためのクライオ試料を作製する。Cryo-EM を用いて撮影した画像データから高分解能の解析を行うためには、VoV1 を可溶化する界面活性剤の影響や、試料の凍結条件を検討する必要がある。このため、Cryo-EM での観察画像を指標に、界面活性剤の種類や濃度、薄く均一な氷に VoV1 を包埋する凍結条件を最適化する。次に、最適化した条件で作製したクライオ試料から、単粒子解析に必要な数千枚程度の画像データを取得する。一方、シナプス小胞のトモグラフィー解析については、研究初年度目に作製した試料を用いて傾斜画像シリーズを撮影し、シナプス小胞のトモグラムを計算する。並行して、VoV1 のサブトモグラム平均化を行うための解析手法の検討を行う。シナプス小胞膜上に存在する VoV1 のサブトモグラム平均化を行うために必要な、機械学習等を利用した解析手法を検討し、シナプス小胞膜に存在する VoV1 を解析する予定である。
|
Research Products
(8 results)