2021 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of V-ATPase by cryo-EM
Project/Area Number |
20J00162
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中西 温子 大阪大学, 超高圧電子顕微鏡センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | Cryo-electron microscopy / 低温電子顕微鏡 / V-ATPase / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
V-ATPase (液胞型 ATPase、以下 VoV1 と記す) は、細胞のほとんどの空胞系膜のほか、破骨細胞やがん細胞の細胞膜にも存在し、ATP の加水分解エネルギーを使いプロトンを輸送することで、細胞内外の酸性環境を制御している。VoV1 が形成する酸性環境は、細胞において多くの重要な役割を果たしている一方、VoV1 の機能・構造に関する十分な知見は得られていない。令和3年度の研究では、研究初年度に引き続き、構造解析を行うための哺乳類細胞由来 VoV1 の精製系確立を中心に研究を遂行し、ラット脳組織およびがん細胞から VoV1 を精製することに成功した。精製試料を負染色法にて観察したところ、安定的に精製された VoV1 複合体を確認することができた。次いで、低温電子顕微鏡 (Cryo-EM) による単粒子解析を行うための凍結試料を作製し、Cryo-EM 観察した結果、VoV1 と思われる密度を確認した。 一方、細胞内で機能している VoV1 の構造を解析するため、VoV1 が局在する細胞内オルガネラであるシナプス小胞を対象として、トモグラフィー解析を試みた。Cryo-EM を用いて、氷包埋したシナプス小胞の傾斜画像シリーズを取得し、3次元像を再構成した結果、より高分解能の構造解析に適した再構成像を得ることができなかった。解析結果から、傾斜画像間の位置合わせを高精度で行う必要性が示唆されたことから、試料作製方法を最適化する必要があることが明らかとなった。また、より高分解能で構造解析を行うための Cryo-EM 画像の収集方法についても現在検討を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究2年度目においては、構造解析を行うための哺乳類細胞由来 VoV1 の精製系を確立し、ラット脳組織だけでなく、がん細胞からも VoV1 を精製することができた。Cryo-EM 観察の結果、安定的に精製された VoV1 が観察されたことから、VoV1 の単粒子解析を行うための重要な一歩であると期待できる。一方、シナプス小胞のトモグラフィー解析については、傾斜画像間の位置合わせを高精度で行う必要性があることが明らかになった。一部に課題が残るものの、全体としては概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2年度目では、哺乳類細胞由来 VoV1 を精製し、Cryo-EM 観察することに成功した一方、単粒子解析に適した密度で凍結試料を作成することができなかった。今後においては、良好な密度で VoV1 を観察するため、VoV1 を吸着させる支持膜を選定するとともに、がん細胞における VoV1 の発現量を増やすような因子を探索する。また、シナプス小胞のトモグラフィー解析については、傾斜画像間の位置合わせを高精度で行うため、位置合わせを行うためのマーカーとなる金コロイド粒子の密度を最適化する。さらに、Cryo-EM 画像の収集方法を最適化することで、シナプス小胞に存在する VoV1 の高分解能構造解析を目指す。
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Research Products
(7 results)