2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ2043
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松平 竜之 大阪大学, 大阪大学微生物病研究所, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞老化 / ミクログリア / 加齢 / 老化 / 中枢神経 / EAE / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の平均寿命の延伸に伴い、認知症などの神経疾患を発症する高齢者が急増しており、現在大きな社会問題となっている。また疾患発症までいかずとも、高齢になると記憶力や判断力が低下することが報告されているが、加齢に伴い脳の機能低下が生じるメカニズムについては依然不明な点が多く、その抑制は未だ実現できていない。 申請者の所属研究室では「細胞老化」という現象に着目し研究してきた。細胞老化とは、「放射線照射や活性酸素種の蓄積などによって修復不能なDNA損傷が生じた結果、細胞増殖が不可逆的に停止する現象」であり、長い間、がん抑制機構の一つとして考えられてきた。しかし近年では、細胞老化を起こした細胞(老化細胞)が炎症性サイトカインなどを分泌して慢性的な炎症を惹起し、組織の機能低下やがんの進展を促すことが明らかになっている。このことから、脳においても加齢に伴い老化細胞が蓄積し、慢性炎症を生じさせることで、脳の機能低下がもたらされているという可能性を考えている。 近年、加齢や疾患時に脳の支持細胞であるグリア細胞の性質が大きく変化し、脳機能の破綻を促すことが明らかになりつつある。申請者はこれまでに高齢マウスの脳に細胞老化を起こしたミクログリア、すなわち「老化ミクログリア」が出現することを見出した。さらに、ミクログリアの細胞老化が抑制されたKOマウスでは実験的自己免疫性脳脊髄炎の表現型が減弱すること、また蓄積のメカニズムについて、常在細菌が関与することを明らかにし、ミクログリアの細胞老化の意義とメカニズムの一端を論文として報告した。 本研究活動によって、加齢に伴う脳の機能低下の抑制のための新たな着眼点、すなわちミクログリアの細胞老化現象の詳細を明らかにできた。ミクログリアの研究の益々の発展によって、未だ有効な治療法のない加齢性の神経疾患や脳の機能破綻を防ぐような未来の医療の足がかりとなることが期待される。
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