2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J01076
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
青木 佳南 大阪大学, 微生物病研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞競合 / 細胞間張力 / 細胞間接着 / アクチン細胞骨格 / Wntシグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュ胚に自然発生したWntシグナル異常細胞では、細胞間接着分子E-カドヘリンの量的異常が生じ、これを隣接正常細胞が感知することで細胞競合が起動する。しかし、隣接細胞がいかにしてカドヘリンの量的異常を感知し、競合を起動するかは未だ不明である。カドヘリンは形質膜を裏打ちするアクチン細胞骨格とリンクしているため、異常細胞においてアクチン細胞骨格の動態変化やそれに伴う組織内張力の乱れが生じることが考えられる。そして、隣接細胞はこの張力変動を感知することで細胞競合を起動させると推測した。本年度は、「研究①:細胞競合における細胞間張力変化の解析」と、「研究②:細胞競合における張力の重要性の検討」を中心に研究を行った。 研究①に関して、カドヘリン量が変動したWnt異常細胞において、アクチン細胞骨格の局在を観察した。その結果、形質膜直下に集積するアクチン細胞骨格量は、胚の前方で低く後方で高いというWntシグナル濃度勾配と同様の勾配を示したうえ、Wnt異常細胞ではカドヘリン量の変動と連動して上昇/低下することが分かった。また、細胞間張力を生み出すアクトミオシンを活性化するRhoAの活性をイメージングした結果、これもWntシグナルと同様の勾配を示し、Wntシグナル異常細胞では活性化レベルが変動することが明らかとなった。 研究②に関しては、細胞間張力を人為的に変動させた張力異常細胞を胚組織内に生じさせ、その挙動を観察した。その結果これらの異常細胞は、胚組織の張力が低い胚前方の領域に出現したものほど効率よく細胞競合による細胞死を起こした。また、これらの細胞競合は、胚組織全体の張力を均一に低下させることで抑制されることが分かった。以上のように、異常細胞における細胞接着や細胞骨格の変動が細胞間張力の増減に変換され、隣接細胞はこれを感知して細胞競合を起動させる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1年目の研究計画内容である「細胞競合における細胞間張力変化の解析」と、「細胞競合における張力の重要性の検討」を中心に研究を行った。 「細胞競合における細胞間張力変化の解析」に関しては、まず、カドヘリン量が変動したWnt異常細胞において、張力変動に関与するアクチン細胞骨格の局在を観察した。その結果、形質膜直下に集積するアクチン細胞骨格量は、Wntシグナル濃度勾配と同様に、胚の前方で低く後方で高いという勾配を示し、Wnt異常細胞ではカドヘリン量の変動に伴い変化することが分かった。また、細胞間張力を生み出すRhoAの活性を定量した結果、これもWntシグナルと同様の勾配を示し、Wntシグナルが亢進した異常細胞では活性化レベルが上昇することが明らかとなった。以上の結果から、細胞間張力はWntシグナルと同様に、前方で低く後方で高いという勾配が形成されており、Wntシグナル異常細胞の出現によりカドヘリン量が増減した異常細胞では、アクトミオシン量の変動を介した細胞間張力の変動が生じていることが示唆された。 「細胞競合における張力の重要性の検討」に関しては、カドヘリンとアクチン細胞骨格を繋ぐメカノセンサー分子であるα-cateninの恒常活性化、もしくはRhoAの恒常活性化型の過剰発現により、細胞間張力を人為的に変動させた張力異常細胞を胚組織内に生じさせ、その挙動を観察した。その結果これらの異常細胞は、胚組織の張力が低い胚前方の領域に出現したものほど効率よく細胞競合による細胞死を起こした。また、Wntシグナル異常による細胞競合は、胚組織全体の張力を均一に低下させることで抑制されることが明らかとなった。以上の結果より、1年目の計画目標としていた「細胞競合において細胞間張力の変動が起きており、また細胞間張力の変動が異常細胞の感知に必要である」ことをおおむね示すことができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「張力を介した異常細胞感知を制御する分子機構の探索と機能解析」を中心として研究を進める計画である。本年度の研究により、「異常細胞の出現により細胞間の張力変化が起きており、隣接細胞はこれを感知することで異常細胞の出現を認識している」ことが明らかになったが、具体的に、張力の変動がどのようなプロセスを経て「異常細胞に選択的な排除・細胞死を誘導する機構」を活性化するのか、を解明したい。例えば、Wntシグナル異常細胞の感知には異常細胞でのE-カドヘリンの量的な変化が関わり、その細胞死誘導にはSmadの活性化とそれに続く活性酸素の増大が関わるが、E-カドヘリンからSmad活性化に至るプロセスは不明である。ここに、張力変動を感知した隣接細胞側の何らかのシグナル伝達が関わると考えているが、どのようにして関わるかは不明である。この解析にあたっては、1年目から進めているイメージング解析を引き続き進め、異常細胞と隣接する正常細胞側における張力関連分子の挙動や活性レベルを定量的にイメージングする。これにより、異常細胞出現時の張力変化に応答して活性化し、異常細胞に細胞死を誘導する因子を探る。 並行して、「排除機構を起動させる異常細胞の異常度、張力変化の度合い」も定量的に解明する。胚組織ではシグナル強度の軽微な揺らぎが起きており、また、張力も常に変化しているため、わずかなシグナル異常や張力変化では排除機構は起動しないようになっていると推測される。これについては、ルシフェラーゼレポーターアッセイによるシグナル活性の定量的解析や、張力に応じて構造変化するFRETプローブを用いた細胞間張力の定量解析により、異常細胞の排除を決定するシグナル異常、張力変化の度合いを探る計画である。
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Research Products
(1 results)