2021 Fiscal Year Annual Research Report
初期近代イタリアの宮廷祝祭における音楽の役割と権力表象
Project/Area Number |
21J20217
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小松 啓子 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 演劇的騎馬試合 / 祝祭 / 初期近代 / アルフォンソ二世・デステ / エステ家 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、16世紀後半にフェラーラおよびモデナ・レッジオ公としてそれらの地を支配していたエステ家の君主、アルフォンソ二世・デステが在位中に催した演劇的騎馬試合を中心とする、初期近代イタリアにおける祝祭および宮廷文化の研究をおこなった。 申請時には、イタリアに渡航したうえで、演劇的騎馬試合やエステ家の宮廷文化にかかわる資料を調査する予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で渡航が難しかったため、国内でオンラインなどで閲覧可能な資料の分析をおこなった。 特に、フェラーラの演劇的騎馬試合の成立過程について明らかにすべく、同時代のヴァロワ朝フランス王の宮廷において、国王シャルル九世およびアンリ三世の母カトリーヌ・ド・メディシスが催した複数の祝祭をとりあげた。夫であったアンリ二世の死後、カトリックとプロテスタントの対立が深まり、宗教戦争の不穏な気配が強まるなか、カトリーヌ・ド・メディシスは両派の宥和と国内の平和の象徴として、大規模な祝祭を多く催した。 それらの概要を調査した結果、これらのフランス王の宮廷で催された祝祭が、アルフォンソ二世が催した演劇的騎馬試合の発想の源のひとつになったと結論付けた。この研究成果について、「初期近代における古代と中世の融合――フェラーラにおける演劇的騎馬試合を例に」として、2022年3月20日にオンラインで開催された待兼山芸術学会において発表をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度前半までは、新型コロナウイルス感染症の影響で海外に渡航しての資料調査を行うことができず、研究が予定よりもやや遅れていたが、その間にオン ラインで閲覧可能な資料の分析を進め、さらに、2023年の1月から3月にかけてはイタリアのモデナおよびフェラーラに渡航して、現地の国立文書館や図書館で一 次資料の閲覧を行うことができた。 これにより、アルフォンソ二世・デステの宮廷でおこなわれた演劇的騎馬試合をはじめとする祝祭に関する多くの資料を入手できた。現在はその読解および分析を進めており、順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年1月から3月にかけてイタリアに渡航しておこなった調査の成果として持ち帰った資料の読解および分析を進め、アルフォンソ二世・デステが支配してい たフェラーラの宮廷で催された演劇的騎馬試合の成立と発展の過程を明らかにすることを目指す。同時に、実際の上演に携わった音楽家や芸術家の同定を進め る。 また、2023年度中に、もう一度イタリアのモデナにある国立文書館での資料調査をおこなう。今回は、2022年度の調査では閲覧できなかった、フェラーラから 他のヨーロッパ諸国へ大使として派遣されていた宮廷人たちがアルフォンソ二世に宛てた手紙を閲覧し、分析して、フェラーラの演劇的騎馬試合が他国の祝祭か ら受けた影響を明らかにすることを目指す。
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