2022 Fiscal Year Annual Research Report
ナノスケールにおける固液間の速度すべりに関する分子動力学解析
Project/Area Number |
21J20580
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大賀 春輝 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 分子動力学 / 固液界面 / 固液間摩擦 / Green-Kubo / Navier境界条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,マイクロからナノスケールの流路を用いて分離,混合,科学操作などを行うマイクロTASの実用化が進むなどナノスケールの流れの工学的応用が進んでいる.近年の計測技術,分子動力学(MD)法を中心とした計算科学の発展によりナノメートルオーダーになると,固液間のすべりの影響が顕著に表れることが明らかになってきた.MD法を用いて,固液摩擦係数を算出することを考えた場合,せん断を与えることにより非平衡定常流れを再現する方法が一般的であるが,長時間の平均を要することや,現実より遥かに大きいせん断を与える必要があるなどの問題がある. そこで本研究では,非平衡定常流れにおいて現れるこれらの問題を解決すべく,MD法を用いてせん断を与えない平衡系の固液摩擦力の揺らぎの自己相関関数を解析することにより固液摩擦係数を抽出する方法を,基礎的な力学である流体力学を前提として理論的に確立することを目的とする . 本研究により,流体力学を前提として,液体に接した固体に関しての運動方程式を立式することにより,平衡系の固液摩擦力の自己相関関数と固液摩擦係数との関係式が明らかになった.具体的には,固液摩擦力の自己相関関数は固液摩擦係数,固液摩擦kernel(摩擦力の位相遅れを示すもの)および系のサイズなどと関係しており,ミクロなタイムスケールにおいては固液摩擦kernelの影響を,マクロなタイムスケールにおいては系のサイズの影響を受けることがわかった.さらに,本年度は,その関係式を用いて固液摩擦kernelや系のサイズの影響が小さいミクロとマクロの中間領域の自己相関関数をフィッティングすることで固液摩擦係数を算出する方法を提案し,実際に固液摩擦係数が可能であることが示された.ただし,この方法の適用範囲,すなわち,どのような固体表面や流体に対して適用可能かどうかは具体的には明らかになっていない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた「分子動力学法において固液摩擦係数を平衡系から算出する方法の確立」はおおよそ達成できたため
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,固液摩擦力の自己相関関数をフィッティングすることにより固液摩擦係数を算出する方法を提案した.しかし,今のところ単純な粒子モデルであるLennard-Jones流体を用いていて,より一般的な水ではまだ本研究で提案した方法を試せていない.また,摩擦力の位相遅れである固液摩擦kernelを調査していたところ固体表面が均一でない場合,振動現象が見られた.この原因についてもあまり明らかになっていない.そこで今後は流体として水を,固体表面としてグラフェンを用いるなど実際の実験などで用いられる物質を想定した系についても本研究で提案した固液摩擦係数の算出方法が適用可能かをシミュレーション,理論の両方の側面から調査する.また,そういった様々な系について固液摩擦kernelがどのようになるかを調査し,そのモデル化に挑戦する.
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Research Products
(4 results)